(その3)「換骨奪胎(かんこつだったい)」について考えてみます
今から1100年ほど昔、「秋立つ日よめる」ということで、藤原敏行朝臣は歌を作りました。古今集、秋の部の冒頭です。
【秋来ぬと目にはさやかに見えねども風の音にぞおどろかれぬる】
「う~む、うまい!」 名歌と言われているのも納得できます。この歌を踏まえて約850年後、蕪村が詠みました。
【秋来ぬと合点させたる嚔(くさめ)かな】
「なるほど! パロディや。風の音がくしゃみになった」 さらに蕪村と同時期の大阪の俳人、大伴大江丸が続きます。
【秋来ぬと目にさや豆のふとりかな】
「ほほぅ、さや豆ときたか。笑わしよんなぁ」 で、蕪村・大江丸から約250年、2011年の8月も終わりに近づいた日、とある無名のおじさんが詠んだのが次の一句です。
【秋来ぬと目に浮かぶのはさやかちゃん】
「何? さやかちゃんって誰?」 このおじさんが大阪にいたとき、知り合いにさやかちゃんていう別嬪さんがおったのよ(笑)
ーーーーーーーーーー
というわけで、『換骨奪胎』とは、昔の人が作った詩文をまねて自分独特の新しい表現をすること、なのだそうです。よく言えば「焼き直し」または「パロディ」、ちょっと間違えれば「盗作」ってことです。
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コメント
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>わた雲さん
入れてもらえると思います。ただ4句目が字余りになっているのが残念です。
『秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども シワの数にぞ おどろかれぬる』
でいいんじゃないかなぁ。こういうのは語呂が大事です。できれば五七五七七の定型にしたほうがいいですよ。発想は確かに換骨奪胎です。「秋」は「飽き」につながりますからね。笑えます。
コメントをありがとうございましたm(_ _)m
投稿: ほととんぼ | 2016年10月22日 (土曜日) 00時44分
換骨奪胎(かんこつだったい)
恥ずかしながら、初めて知る言葉です。
頑張って覚えても、明日には忘れていそう。。。
秋来ぬと 目にはさやかに見えねども シワの増加にぞおどろかれぬる
これも換骨奪胎に入れてもらえるのかなぁ。。。
投稿: わた雲 | 2016年10月21日 (金曜日) 21時00分