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2011年8月25日 (木曜日)

(その6)「上には上がある」という話

昔々、あるところに弓の名人がいました。実力は百発百中で、的をはずすことはほとんどありません。名人は自慢して言いました。

 『世の中にオレより上手な弓の使い手はいないのだ』

ある時、いつものように弓を放っていると、見ていた一人の油売りがつぶやきました。

 『な〜んだ。がんばってうまくなっただけさ。たいしたことはない』

それを聞いた名人は激怒しました。

 『オレの弓にケチをつけるとはどういうつもりだ。訳を申せ。事と次第によってはただではおかんぞ!』

 

名人は矢をつがえて油売りに向けました。すると油売りは油用のとっくりを地面に置くと、その口に穴の開いた銅銭を乗せ、柄杓(ひしゃく)で油を注ぎはじめました。油は地面にこぼれぬばかりか、銅銭をも濡らさず、すーっと銅銭の穴からとっくりに吸い込まれていきます。名人は油売りの見事な技に驚きました。

 『こんなことは驚くほどのことではありません。がんばって練習すればだれでもできるようになるのです。だからあなたの弓も一生懸命に練習したことはわかりますが、ただそれだけのことです』

その言葉を聞いた弓の名人は、黙ってその場を立ち去った、ということです。(おしまい)

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