(その34)狐はなぜ「キツネ」というか?
昔、美濃の国のある男が、野原で美しい女性を見つけて結婚した。やがて女は妊娠して男の子が生まれた。 同じ日、男が飼っている犬も子犬を生んだ。ところが、生まれた子犬はいつも、女に吠えかかる。女は怖がって「犬を殺して」と願うが、かわいそうなのでそのままにしていた。
あるとき、女が米つき小屋に入ろうとしたところ、親犬が女に噛み付こうと吠え立てた。驚いた女は、たちまち狐の姿になって、かごの上に逃げた。妻が狐とわかったからには、一緒に暮らすことはできない。男は女に言った。
「お前とは子供までできた仲ではないか。忘れはしない。いつでも来ておくれ。一緒に寝よう」
それ以来、女はときどき男の家にやってきては一緒に寝た。なので、それ以来、「キツネ(来つ寝)」と名づけることになった。
男との間に生まれた子供の名前もキツネと言い、力持ちで走るのも早く、まるで鳥のようだった。
・・・・・・
というような話が「日本霊異記」に書いてあります。
« (その33)ワシントンナショナルギャラリー展 | トップページ | (その35)笑い話 なのかなぁ »
「 古典より」カテゴリの記事
- 五条の天神(京童より)(2014.04.12)
- 歌も詩も細字にかゝん花の友(京童より)(2014.03.26)
- 鏡石(都名所図会より)(2014.03.28)
- なさけなく折る人つらしわが宿のあるじ忘れぬ梅の立ち枝を(天神御歌)(2014.03.06)
- 比叡山に登るとき、弁当に「魚」を入れるのは禁物?(2014.02.24)
コメント