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2011年9月 3日 (土曜日)

(その7)日本語の美しさを感じたことがありますか?

 台風12号が来ています。エアコンはやめにして窓を開けたままにしていると、北から南へ家の中を風が抜けていきます。木々は風に押されて音を立てています。当地からはちょっとコースがそれているので、そよ風というには強く、暴風というには弱く、ざわざわという感じです。足元から顔面へ吹き上げていくときが一番気持ちいいです。

【君待つとわが恋ひをればわが屋戸のすだれ動かし秋の風吹く】(万葉集・488)

 この歌、いいなぁ。いま台風の進路にあたっている人にはそれどころではないのだろうけれど、私には今日みたいな、ざわざわ風の日に詠まれたような気がしてなりません。

 「わが恋ひをればわが屋戸の」という、たたみかけるような「わが」の繰り返しに、心細さと不安が、そして「秋の風吹く」という、オチ的な結句になんとも言えない恋の期待が感じられます。それらは、美しい日本語の中に、これ以上のものはないといっていいくらいの余情を持たせていると思います。

 芭蕉は言いました。 「言ひおほせて何かある」

 まったく同感です。すべてを言ってしまっては、つまらなくなってしまいます。読者の想像力に訴えて、余情と余韻を楽しめる作品でないと、おもしろいことも何もありません。そのためにも、あいまいな表現が多い日本語は、和歌や俳句などの短詩に適しているのだと思います。できることならば、ぜひ作者の額田王さんにあって、「こんなすばらしい日本語の歌を残していただいてありがとうございました」とお礼を言いたいものです。

 台風は速度が遅いようなので、どうやら今日は一日中、この歌が頭の中をぐるぐるまわることになりそうです。

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コメント

君待つと

動画いろいろみました。

同じく!
たゆとうような旋律、頭から離れません。

>わた雲さん

「君待つと」で動画を検索すれば、You Tubeで聞けますよ。
私も最近知ったのですが、しばらく頭から離れなくなりました(笑)

君待つとわが恋ひをればわが屋戸のすだれ動かし秋の風吹く

額田王なんですね。
解説を読んだうえで、改め読んでみるとみると、
ほんとうに、何度も口に出してみたくなる歌の心地良さ、
たったこれだけの日本語の並びに、奥行きのある美しい絵が見えてきました。
ステキな歌を紹介して下さってありがとうございます。

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