それなりの経済学史
2011/9/10
経済学史に興味があり、いろいろと調べながら書いてみた。私自身、書きながらまとめると理解しやすいためだが、備忘録としてブログに残しておきます。
―それなりの経済学史―
(1)重商主義
15~18世紀にかけては、「富」=金銀財宝と考えられてきた。各国の王や有力な商人たちは貴金属を蓄えることに没頭した。そのために貴金属の国外への流出を防止し、流入を拡大するために金山を開発し、海外に新天地を求めて略奪・破壊を繰り返した。これを「重商主義」「重金主義」という。(スペイン・ポルトガルの大航海時代)
(2)アダムスミスの考え
18世紀の末にイギリス人のアダムスミスが「富というのは金銀財宝ではなく、労働の生産物であり、社会の再生産のシステムである」と説いた。この労働価値説ともいう考え方が近代経済学のはじまりである。そもそも経済学の基本問題とは「何を」「どれだけ」「どのような方法で」「誰のために」生産するのか、を考えることである。なぜ、それらを考えることが必要なのかというと、人間の欲望には限りがないが、資源には限りがあるから。もし世界中の資源がすべての人間の欲望を満たしても、有り余るほどあるならば経済学は必要ない。
アダムスミスは、経済とは、資本・労働・土地の3要素および社会の需要と供給の関係で決まる、と考えた。
資本=物的生産手段のこと(工場の機械等)
労働=人手のこと
土地=自然から与えられた生産要素のこと(天然資源を含む)
(3)資本主義
資本主義とは、貨幣を社会に投下して、社会の運動により利潤と剰余価値を生み出し、より大きな貨幣として回収するシステムのこと。
→a私有財産制
b私企業による生産
c労働市場を通じた雇用
d自由な市場における競争を通じた需要と供給、価格の調整
(=市場経済)
が、資本主義の特徴。
19世紀までは、自由市場の需要と供給の関係による価格調整機能ですべての問題が解決されるため、政府の役割は国防・警察・最小限の行政に限るべきで、経済問題には介入すべきではない、と考えられてきた。これを自由放任主義といい、古典派経済学という。小さな政府・安価な政府を目指す。
(4)帝国主義とマルクスの考え
その後、産業革命が進んで、資本主義は飛躍的に成長した。ヨーロッパの資本主義列強国は原材料の供給と市場の確保のために競って外国を占領し、植民地を広げた。これを帝国主義という。
国内では労働者が低賃金で長時間働かされ、生活も悲惨であった。国家の支援がなかったため社会的弱者が増加していった。労働者は待遇改善を求める運動を開始し、暴動が起きて社会不安が増した。そこにドイツ人のマルクスがあらわれた。
マルクスは、資本主義下で労働者が搾取され、低い生活水準にあるのは資本家階級と労働者階級があることが問題とした。改善するためには資本家階級をなくしてしまえばよいと考えた。資本の私有を禁止して公有にし、労働者全体で所有すればよいと考えた。すべての利益を労働者だけで所有することで、階級間の闘争がなくなり、労働者の生活水準が向上するのだと。さらにマルクスは、経済の基本問題を市場に任せるのではなくて、国家によって解決を図るべきだと考えた。国家が必要なものを、生産計画を立てて生産していけばよい、と言う。これは自由放任主義とは正反対のやりかたで、計画経済と呼び、社会主義・共産主義につながる。
(5)社会主義・共産主義
市場経済では、所得の分配は能力に応じて行われる。だからこそ、みんな一生懸命に働き、努力して、より多くの所得を得ようとする。そこには、労働(働く)ということは人間にとって苦痛をともなうものであって、資本主義には「給料(お金)がもらえなければ、進んで働く人はいない」という前提がある。
共産主義では、所得は能力によってではなく、必要に応じて分配される。たくさん仕事をしたからといって給料が増えるわけではなく、より多くのお金を必要とされる人の給料が高くなる。病気の人や高齢者にとっては、理想の社会ともいえる。しかしいくら働いても給料が増えないのなら、一生懸命に働く人が少なくなり、全体に貧しい社会になる恐れがある。だから、共産主義は「給料(お金)をもらうために働くのではなく、仕事を通じて社会に貢献できることに生きがいを感じる」ということを前提にしている。
これは、実際問題としては難しい。そこでマルクスはこういう共産主義の社会に移行する前段階として、社会主義を考えた。社会主義とは「資本は公有とするが所得は能力に応じて分配する」という考え方である。ただ、旧ソ連や東ヨーロッパ諸国が崩壊したように、社会主義体制ではうまくいかないことが立証されたように思われる。国家が人間の活動のすべてを把握しようとするのは無理があって、人間は結局ひとりひとりが自分の利益のために努力するものだということなのだろう。
(6)修正資本主義
20世紀に入ると、マルクスの考え方に対して、労働者の生活水準の低下などの資本主義の問題点を、政府が経済問題に積極的に介入することによって解決しようとする考え方が現れてきた。これを修正資本主義と呼ぶ。
労働者に団結して企業と交渉する権利を与え、政府が老人・医療・失業などの社会的問題に対して積極的に救済を行い福祉の向上を図る、という考え方である。必然的に政府の役割は大きくなり、大きな政府・福祉国家を目指すものになる。
修正資本主義の経済は、民間部門と政府等の行う公的部門が混在することになるので混合経済ともいう。現在の日本をはじめ、ほとんどの資本主義諸国は混合経済体制。修正資本主義の考え方の中で、もっとも大きな影響を与えたのがイギリス人のケインズである。彼の考え方は、現在では古典派経済学に対してケインズ学派と呼ばれている。
(7)民主党と共和党
現在の米国の政治は、大きな政府を目指す民主党と小さな政府を目指す共和党の争いでもある。
とりあえず、ここまで。