柳宗元の『江雪』を、こう…説明してみた。
江雪(こうせつ)(柳宗元)
千山鳥飛絶(せんざんとりとぶことたえ)
萬径人蹤滅(ばんけいじんしょうめっす)
弧舟蓑笠翁(こしゅうさりゅうのおきな)
独釣寒江雪(ひとりつるかんこうのゆき)
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「山という山から飛ぶ鳥が見えなくなり、道という道から人の足跡が消えてしまった。(そんな中)小舟に乗ったミノカサ姿の老人が、独り雪降る川で釣り糸を垂れている」
…意訳すれば、こんな感じになるのでしょうが、どんなにうまく訳したところで、この詩の言い回しにはかないません。
まず、起句~承句へと見事な対句です。
「せんざん とりとぶことたえ」「ばんけい じんしょうめっす」
音のない殺風景な大自然の中に作者はいます。そして転句、
「こしゅう さりゅうのおきな」
で場面転換をします。ここまで、視線は山から道へ、さらに川の小舟へと動いています。まるで動画を見ているかのような、すばらしい表現力です。私自身はミノカサを『さりゅう』と読み下すところで、背筋がゾクゾクっとします。
結句では小舟のクローズアップです。
「ひとりつる かんこうのゆき」
ここで読者の頭の中がそれまでの灰色イメージから、真っ白な雪景色にパァーっと変わります。いやー、うまくまとめたものです。
「千山」「萬径」という大きな風景と「孤舟」「独釣」という小さな心象が見事に表現されています。
柳宗元さん、すばらしい詩をありがとう!(笑)
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