音を知る=知音
知音と書いて「ちいん」と読みます。
手元の字引(新明解国語辞典)によると『(心の底から理解しあった)親友。(広義では知人をさす)』とあります。これは中国の春秋時代(ざっと2500年前)の故事からきています。
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あるところに伯牙(はくが)という琴を弾くのがとても上手な人がいました。その友達に鍾子期(しょうしき)がいました。二人は大の親友です。伯牙が高い山を思いつつ琴を奏でると鍾子期は、
『その曲、いいねぇ。泰山のような高くて険しい山を想像させるよ。すばらしい!』
と言ってくれます。また、滔々と流れる水を表現しようとすると鍾子期は、
『いい曲だなぁ。広々とした大河をイメージしたけど、あってるかい! 素敵だねぇ』
と言ってくれます。鍾子期は伯牙の弾く琴の音を、そのイメージどおりに言い当てる最高の聴き手でした。ところが、鍾子期は病気にかかって死んでしまいます。あれだけ琴を弾くのが好きで上手だった伯牙は、愛用の琴の弦を絶ち切って壊してしまい、二度と弾くことはありませんでした。鍾子期に聴いてもらえなければ、もはや琴を弾く意味がなかったのです。それくらい鍾子期の存在は大きいものでした。
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この話を伯牙絶絃(はくがぜつげん)といいます。そしてこの話から無二の親友=音を知る人=知音(ちいん)という熟語が生まれます。ちなみに音を「オン」と読むのが呉音で、「イン」と読むのが漢音だそうです。
そういえば、陰陽師安倍晴明の友人ともされる源博雅(みなもとのひろまさ)は、またの名を博雅の三位(はくがのさんみ)といい、管弦の名手だったといいます。逢坂山の蝉丸のもとに3年間通い続けて琵琶の秘曲「啄木」「流泉」を伝授された話が今昔物語集にあります。これは「伯牙」「博雅」の「はくが」つながりで、同じような楽器にまつわる話が創作されたのかもしれませんね。とにかく日本人は語呂合わせ(ダジャレ)が好きですから。
さて、この記事を最後まで読んでいただいた方は、私にとって知音かな? (笑)
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