「はしり」=台所の流しのことですが…
このあいだ、ふとした会話の中で、台所の流しのことを「はしり」と言うのを聞いた方から、『懐かしい言い方やなぁ。久しぶりに聞いたわ。せやけどなんではしりて言うのやろ?』 と質問されました。たしかに京都では流しのことをはしりとも呼びます。簡単に調べてみました。
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手元の新明解国語辞典によると、走(り)の項に③として
【(東北と西日本の方言)台所の流し】
とありました。えっ? はしりって京都(関西)だけで使う言葉じゃないんだ。方言の広がり方として、はじめ京都(中央)で使われていた言葉が、波立つように円を描きながら広がっていくことがあると聞いたことがあります。まさにはしりはその例のひとつなのでしょう。それはともかく…、
昔、逢坂山にコンコンと勢いよく湧き出でる泉があって、水が走っているよう、ということで走り井と呼ばれていました。枕草子に、
『井は、ほりかねの井。玉の井。走り井は逢坂なるがをかしき。…』
(意訳=井(井戸・泉)は、ほりかねの井、玉の井(という名前がよい)。走り井は逢坂にあるのが(男女が走り寄って出会うことを連想させて)すてきだわ…)
というくだりがあります。さらに調べてみると走り井と呼ばれた泉はほかにもあったようです。だから、必ずしも逢坂山の走り井から広がった言葉ではないのかもしれません。ただ、流しをはしりというのは、炊事の際に勢いよく水を流すのを「走り井」にたとえるようになったのだと考えられます。
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(今は昔。ある家で洗い物をしているときのこと)
「もっと水流さんと汚れが落ちひんでぇ」
「そうかなぁ?」
「そらそうやがな。逢坂山の走り井みたいに水をぎょうさん使わなあかん…そうそう、それでええ。そのくらいで走り井と一緒や。走り井や。走り井や。はしりや」
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というわけで、このような会話が繰り返されているうちに、流しのことをいつのまにかはしりと呼ぶようになったのです。
ホンマかいな? (笑)
(ほととんぼは物好きなだけで、国語に詳しいわけではありません。参考程度に読んでください)
【148】
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