芭蕉の雪を詠んだ句
今朝出かけるとき薄らと雪化粧していました。ふと、雪を詠んだ芭蕉の句を思い出したので、二句鑑賞してみます。
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【いざさらば雪見にころぶ所まで】
【きみ火をたけよき物見せん雪まろげ】
「いざさらば」の句は、笈の小文の旅で名古屋の弟子の家を出立する際に、「きみ火をたけ」のほうは、江戸に住まいしていたとき雪の日に友人が訪ねてきてくれたのを喜んで、それぞれ作ったといいます。こういうたわいない句をみると、芭蕉という人は賢いのか幼稚なのか、俳句が上手なのか下手なのかわからなくなります。
ただ、この韻律・リズムはすばらしいです。つい、何気なしに口をついて出てしまいます。たぶん上の句は、『さらば』でa音が、『ゆきみ』でi音が、『ころぶ』『ところ』でo音が韻律を整えているのでしょう。下の句は『きみ』『よき』『ゆき』と“Ki”の三連発が心地よいのだと思います。句を作ったら舌頭に千転せよと言っているくらいです。意識して何度も声に出して詠んでいるでしょうから、やっぱりすごいんでしょうね。即興で簡単に詠んでいるようでも、なかなかマネできるものではありません。まさに萩原朔太郎が言うように芭蕉の句は音楽なのだと思います。
【138】
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