一条桟敷屋鬼ノ事(宇治拾遺物語より)
宇治拾遺物語巻十二ノ二十四
『一条桟敷屋 鬼ノ事』
という話を見つけました。以下、現代語訳してみます。
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【今は昔、一条の桟敷屋に、ある男が泊まって遊女と寝ていたところ、夜中に風が強く雨が降ってすさまじい天気になった。と、一条通を「諸行無常!」と叫んで通り過ぎるものがある。
「いったい何者だ?」
と思って、蔀(しとみ)戸を少し開けてのぞいてみれば、なんと! 軒の高さと同じ背丈で、馬の頭をした鬼であった。男は恐ろしくなって、戸を閉めて奥の方へ引っ込んだ。鬼は格子を押しあけ顔を入れて
『よく御覧じつるな、御覧じつるな』
と言った。男は刀を抜いて
「入ってきたら切るぞ!」
と身構え、女をかばいながら待っていたのだが、鬼は
『よくよく御覧ぜよ』
と言って去っていった。
「これが百鬼夜行というものか…」
なんと恐ろしかったことか。それゆえこの男は、二度と一条の桟敷屋には泊まらなかったということである】
※これは意訳です。鬼が言ったという『御覧じつるな』『御覧ぜよ』とはどういうことか? もうひとつ判然としませんが、おそらく何かのデモンストレーションだったのでしょうね。
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さて、この話の「一条桟敷屋」はどこにあったのでしょうか? 調べてみると、どうやら現在の一条室町付近にあったようです(徒然草50段「応長の頃」参照) いま、一条室町付近はどんなふうになっているのかというと、一条通も室町通もメインストリートではありませんので、住宅地の真ん中って感じです。京都市立上京中学校があります。桟敷屋というのは、葵祭を見物するために作られた建物のようです。ちょうど一条通のこのあたりが行列見物の絶好の場所だったのでしょう。
かつて一条大路が平安京の北の端であり、その北側の洛外は粗大ごみの廃棄場所であったともいわれています。不要になった大型の家具などを捨てたそうなのですが、それが付喪神となって一条大路を夜行したのではないかとも言われています。
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現在、西大路一条から東の大将軍商店街が別名「妖怪ストリート」と呼ばれています。どんな通りなのか、ちょっと紹介してみます。
「妖怪ストリート」の幟(のぼり)があちらこちらに立っています。
このように、ところどころに妖怪らしきものが…これが「百鬼夜行」でしょうか?
見た感じ、なんでもない商店街ですが、ときどき妖怪に関するイベントも開かれているようです。
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