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2012年3月16日 (金曜日)

「イケズ」考(小話)

ある人に京都の人は意地悪(イケズ)だと言われてしまいました。う~ん、なるほど。そこで、ちょっとした小話を創作してみました。 題して「イケズ考」です。

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「京都人はイケズやって言われたんやけど、お前、イケズってどういうことかわかってるか? たとえばな、お店で飲んでて閉店時間が来たら 『閉店です』 って言わずに電気を消されてしまうとか…」

「なんや急に、イケズな話かいな。知ってるで。昨日 『四条に遊びに行こ』 言うて友達と約束してたんやけど、朝起きたら11時や。あちゃー、10時の待ち合わせやったのにどうしよう! えらいこっちゃ~。結局オレだけおいてけぼりや」

「それは行けずやろ」

「あっ、そうか。間違えた。うちのおねえちゃんがな、生け花を習ってんねんけど、この間お客さんが来るっちゅうんで 『それやったらうちが床の間にええのを活けといたげる』 言うてた。ところが肝心の花を買うてくるのを忘れてしもたんやなぁ、これが。せっかくがんばろぅ思てたのに…」

「あほか、それは活けずやろ。わからんやっちゃな、今は、京都人はイケズや言われた話をしてんねん」

「お前こそわからんやっちゃなぁ。さっきからイケズを実践してるがな。イケズっちゅうたら、意地悪とか、小面憎い、いうことやろ。オレがイケズして、わざと間違えて笑いを取ろうとしてるのがわからんか? 知ってても知らんふりする。京都の人には美徳やね。閉店時間がきたら電気消すって、そういうわかりきってることを言葉に出して言わへんのが京都の人や。だいたい店のどっかに 『営業時間は何時から何時まで』 って書いてあるやろ。もしくは、先に 『この店は何時まで?』 って聞くやろ。見てへんほうがアホやねん。聞かへんほうがボケてんねん。逆にオレは 『閉店です。はよ帰れ』 っていうよりも、さりげなく電気消したほうがええと思うな。電気消されたら 『あっ、そうか。もう閉店時間なんや。さりげなく教えてくれるなんてオシャレやなぁ』 って思うな。これは相手に対する気配り言うか、ひんちゅうもんや。それを何にも知らんよその人が 『京都の人はいやらしい、意地悪や、腹黒い、イケズや』 言うねん」

「なんとなぁ。えらいポリシーやなぁ」

イケズは悪い意味ばっかりと違うで。まわりくどい言い方をして相手を傷つけんようにしようとか、場の雰囲気を和やいだもんにするために、自分や相手をちょっとだけ陥れて笑いを取る、ブラックユーモアみたいなもんがイケズの中心や。せやからイケズされたときには逆に感謝するような、そのくらいの度量がないと京都ではやっていけへん。郷に入っては郷に従えって言うやろ。別に京都だけやのうて、どこに行ったって気質の違いはあるもんや」

「そうか、そういうもんか」

「そうやがな。せやから、今のはイケズやと思うても腹を立てたらアカン。にっこり笑って 『今日はえらいイケズされたな。まいったまいった』 と、大きいところを見せるのが京都人とつきあうコツや。そしたら態度変えると思うな。逆にあの人はできた人や、って尊敬されるかもしれん。心の中はわからんけどな

なんやそれ! 心の中で何を考えてるかわからんところが、イケズって言われてる原因やろが。もう、話にならんわ。アホ!

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というわけで、確かに京都の人には排他的で意地悪、腹黒のイメージがあると思います。ただ、一概にイケズとはいっても、少しくらいは気配りと笑いの要素もあるんじゃないかなぁ。どっちにしろ、イケズされたからと言ってあんまり気にしたらあきませんよ。当人たちはそんなことに頓着してないんだから。結局、いろんな土地柄があるし、いろんな人がいるということです。

【202】

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