巧遅拙速(こうちせっそく)
(前略)故兵聞拙速。未睹巧之久也。夫兵久而國利者、未之有也。(後略)
【故に兵は拙速を聞く。未だ巧(こう)の久しきを睹(み)ざるなり。夫れ兵久しうして國に利ある者、未だ之(これ)有らざるなり。】
意訳:(前略)ゆえに戦いとは、拙くても速く終わらせるものだと聞いている。巧みな戦術で長く戦った例を見たことがない。そもそも、長い間戦って国家に利益をもたらしたということは、いままでにないのである。(後略)
ーーーーーーーーーー
この言葉、兵法で有名な孫子の作戦篇にあり、巧(たく)みで遅いよりは拙(つたな)くても速いほうがいい ということです。巧遅は拙速に如かずとも言います。では、なぜ拙速のほうがいいのでしょうか? その理由について孫子はこう述べています。
「持久戦(巧遅)になると、兵の士気がにぶり、鋭気を失う。また長い間軍隊を動かしていると国力を使い果たす。そこを他国につけ込まれる」
この言葉、今ではもちろん戦争ではなく、普段の仕事や業務の中で引用されることが多いですが、異論がありそうです。たとえば、サラリーマンなら一度は次のような経験をされたことがあるのではないでしょうか?
『上司に指摘されたり指示されたならば、すぐやりなさい!』
そこであわててやったものの、準備不足でうまくゆかず失敗。結局、
『いかにも拙速だったな』
と、かえって怒られてしまう、なんてことが。
こんなときのために「急いてはことを仕損じる」ということわざもあります。要するに、サラリーマンには巧遅も拙速も認めてもらえない、ということです。すなわち「巧速」こそが求められています。ホント、大変ですよね。
(参考:「孫子(天野鎮雄訳、注)」講談社文庫)
【204】
« 「送別」と「留別」 | トップページ | 「歌」は「訴え」からきている? »
「 知りたい!」カテゴリの記事
- 「強」という字のこと。(2013.02.26)
- 最近知った難解語&難読語。(2013.02.19)
- 鳥渡。(2013.01.21)
- 「忸怩」たる思い。(2012.12.30)
- 大帝について。(2012.12.08)
トラックバック
この記事へのトラックバック一覧です: 巧遅拙速(こうちせっそく):
» 世の中は「巧遅」よりも「拙速」であるほうが結果が出やすいのに、「巧遅」の方が高級だと思っている人が多い気がする [Coffee, Cigarettes & Music]
皆さんこんばんは。今回は記事「海外で長期間暮らした人が驚いた久しぶりの日本→『完璧じゃないことをみんなで批判しみんなで罰する社会』」を読んで思ったことを書きます。記事概要としては題名にすべて表れていて、あとはさまざまな人がコメントで「完璧を追求しすぎる社会... [続きを読む]
コメント