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2012年3月18日 (日曜日)

巧遅拙速(こうちせっそく)

(前略)故兵聞拙速。未睹巧之久也。夫兵久而國利者、未之有也。(後略)

【故に兵は拙速を聞く。未だ巧(こう)の久しきを睹(み)ざるなり。夫れ兵久しうして國に利ある者、未だ之(これ)有らざるなり。】

意訳:(前略)ゆえに戦いとは、拙くても速く終わらせるものだと聞いている。巧みな戦術で長く戦った例を見たことがない。そもそも、長い間戦って国家に利益をもたらしたということは、いままでにないのである。(後略)

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この言葉、兵法で有名な孫子の作戦篇にあり、巧(たく)みで遅いよりは拙(つたな)くても速いほうがいい ということです。遅は拙速に如かずとも言います。では、なぜ拙速のほうがいいのでしょうか? その理由について孫子はこう述べています。

 

「持久戦(巧遅)になると、兵の士気がにぶり、鋭気を失う。また長い間軍隊を動かしていると国力を使い果たす。そこを他国につけ込まれる」

 

この言葉、今ではもちろん戦争ではなく、普段の仕事や業務の中で引用されることが多いですが、異論がありそうです。たとえば、サラリーマンなら一度は次のような経験をされたことがあるのではないでしょうか?

 

上司に指摘されたり指示されたならば、すぐやりなさい!

 

そこであわててやったものの、準備不足でうまくゆかず失敗。結局、

 

いかにも拙速だったな

 

と、かえって怒られてしまう、なんてことが。

 

こんなときのために「急いてはことを仕損じる」ということわざもあります。要するに、サラリーマンには巧遅も拙速も認めてもらえない、ということです。すなわち「巧速」こそが求められています。ホント、大変ですよね。

 

(参考:「孫子(天野鎮雄訳、注)」講談社文庫)

 

【204】

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