早発白帝城(李白)
【早発白帝城(つとにはくていじょうをはっす)】
朝辞白帝彩雲間(あしたにじす はくていさいうんのかん)
千里江陵一日環(せんりのこうりょう いちじつにしてかえる)
両岸猿声啼不住(りょうがんのえんせい ないてやまざるに)
軽舟己過万重山(けいしゅうすでにすぐ ばんちょうのやま)
ーーーーーーーーーー
(意訳)
【早朝、白帝城を出発す】
朝焼け雲鮮やかな白帝城を出発し、千里かなたの江陵まで一日で帰ってゆく。両岸の猿の啼き声がまだやまないうちに、船足は軽く幾重もの山を過ぎていった。
ーーーーー
この詩、大好きです。何と言っても風景がデカイ!言葉がわかりやすく、リズムもよく、一気に覚えることができます。
①まず一句目の「彩雲の間」がすばらしい。この雲はきっとピンク色です。登山用語でいえばモルゲンロートってやつ。私も一度だけ木曽御岳に行ったとき、見たことがあります。あれは美しかった! この世のものとは思われないくらいでした。
②二句目の「一日」を「いちじつ」と読むところがすばらしい。現代人からみれば、とてもおしゃれです。
③そして三句目、ここに出てくる猿はニホンザルではありません。あれは「キャッキャッ」と鳴いて、詩とイメージが合いません。解釈を教えてもらっている漢詩の先生がおっしゃるには、テナガザルとのことです。テナガザルは歌を歌うのだそうです。いまは想像に頼るしかありませんが、悲しげな長い啼き声が似つかわしく思われます。
④四句目の「万重の山」がすばらしい。李白の詩はおおむね大げさですが、この詩を締めくくるのにぴったりの言い回しです。『ばんちょうのやま。ばんちょうのやま。ばんちょうのやま…』と舌頭を千転させながら、雄大な景色を思い浮かべます。
盛唐の李白・杜甫は情熱の詩人、中唐の白楽天は愛情の詩人、と吉川幸次郎先生が何かに書いておられました。まさにこの詩には李白の情熱があふれています。ぜひ声に出して読んでみてください。李白の情熱が伝わって、元気になれます。
(ほととんぼは漢詩に精通しているわけではありません。勝手な鑑賞です)
【195】
« 嘉陵夜有懐(白楽天) | トップページ | おめでたい話(株主優待が届いた話) »
「 勝手に鑑賞「古今の詩歌」」カテゴリの記事
- 夏風邪はなかなか老に重かりき(虚子)(2014.05.21)
- 後夜聞仏法僧鳥(空海)(2014.05.20)
- 夏といへばまづ心にやかけつはた(毛吹草)(2014.05.19)
- 絵師も此匂ひはいかでかきつばた(良徳)(2014.05.18)
- 神山やおほたの沢の杜若ふかきたのみは色にみゆらむ(藤原俊成)(2014.05.17)
コメント