柳桜をこきまぜて…(桜を詠んだ詩歌2)
(花盛りに京を見やりてよめる)
【見渡せば柳桜をこきまぜて都ぞ春の錦なりける】素性法師(古今集56)
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素性法師の詠んだ有名な歌です。
意訳:(花盛りに京を眺めて詠んだ歌)見渡せば(芽吹いた)柳と(満開の)桜が交ざり合って、都はまさに春の錦の美しさだ。
この歌の眼目は「春の錦」にあります。錦というのはさまざまな色で織りなした織物のことです。その色どりの豊富さをたとえて、普通は「錦秋」「紅葉の錦」という、秋を象徴する言い回しに使います。その錦を春の柳・桜に見出したところが素性法師の発見であり、「こきまぜて」は春の錦へ導くための重要なポイントになります。
では「こきまぜて」とはどういう状態なのか? 辞書を引いてみました。
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●【こきまぜる(扱き交ぜる)】→種類の違った物を交ぜ合わせる。(新明解国語辞典)
「扱」という漢字は普通は『あつかう』と読みますが、『しごく』とも読み、その意味でいくと、扱き交ぜるとは、手でしごいて一緒にする状態、転じて二種類以上のものが混ぜ合わさった状態になります。なるほど、なんとなく理解できました。
そこで素性法師の見た、柳・桜をこきまぜた春の錦とはどんな景色なのか? 現代の京都市内に探してみました。
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それがこの写真です。三条大橋から四条大橋を望んでいます。鴨川の土手、川端通り沿いです。
このように鴨川の堤防には、素性法師の歌を意識して、柳としだれ桜を植えてあるのだと思います。素性法師をまねて一首詠みたいところです(笑)
※ちなみに「こきまぜる(扱き交ぜる)」と「かきまぜる(掻き混ぜる)」は字が違います。「掻」は『かく、ひっかく』の意で、「扱」の『しごく』とは動作が違います。
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