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2012年5月30日 (水曜日)

ホトトギスの句。

先日、金閣寺の裏山のあたりを通ったら、ホトトギスの鳴き声が聞こえてきました。ホトトギスといえば夏の季語です。いくつか鑑賞してみます。

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ほととぎす消行方や島一ツ(ほととぎすきえゆくかたやしまひとつ・芭蕉)

芭蕉が笈の小文の旅で、須磨から淡路島を見て詠んだのだそうです。「消行方」と「島一ツ」がうまく呼応していて、眼前の風景が眼に浮かびます。芭蕉には「ほととぎす声横たふや水の上」という句もありますが、ともに中七が「」で切れていて、一句の調子をよくしています。芭蕉の句は言葉の使い方が本当に上手で、音楽に近いところがあります。

ほととぎす平安城を筋違いに(ほととぎすへいあんじょうをすじかいに・蕪村)

平安城と聞けば、碁盤の目の区割りを思い浮かべます。そこをすじかいにホトトギス飛んでいったというのです。縦・横・斜め、それも樹上から上空へと、うまく言ったものです。「筋違い」の五文字に飛行経路だけでなく、鳴き声までも含まれているとするならば、四次元世界を表現していることになります。蕪村の力量に驚くばかりです。あっぱれ! 蕪村。

時鳥厠半ばに出かねたり(ほととぎすかわやなかばにでかねたり・漱石)

夏目漱石が西園寺公望から何かの会に招待されたとき、この句を送って、断ったのだそうです。なんでも、厠でホトトギスの鳴き声を聞くのは不吉なんだそうで、そのまま解釈すると、時の有力者にかなり失礼な返答をしたことになります。俳句としてはもうひとつですが、さすがに漱石、反骨精神というか、石に漱ぐだけのことはあります。

谺して山ほととぎすほしいまゝ(こだましてやまほととぎすほしいまま・久女)

杉田久女(1890-1946)という人は、とても我の強い人だったようです。ワガママばかりを言うもんで、師匠の高浜虚子に嫌われ、除名されたりしています。この句も、はじめ『ホトトギス』に投句してボツになったのが納得できなくて、もう一度毎日新聞に送ったところ一等になりました。句としてはたしかにすばらしい出来で、最後の「ほしいまゝ」には読む者をドキッとさせる力があります。英彦山に何度も登って、この言葉を得たという絶唱です。

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不如帰・時鳥・杜鵑・子規…ホトトギスを漢字で書くと二十種類ほどの書き方があるのだそうです。鳴き声は現在でこそ「テッペンカケタカ」と表現されることが多いですが、古の人は「ホチュチュギス」と鳴くのを聞いて「ホトトギス」と名付けたのだそうです。真偽のほどはともかくとして、ホトトギスというネーミングには日本語の美しさを感じます。名句が多いのもうなづけます。

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コメント

返歌 ほととぎす…に因んで短歌一首です、

夏山の草木が繁る暗がりに折しも差せりほととぎすの音 (ね)

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