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2012年6月22日 (金曜日)

「庚申」って何のこと?

ある人に「庚申(こうしん)って何?」と聞かれました。

庚申とは十干十二支でいうところの「かのえさる」の日のことで、六十日に一度ずつやってきます。いったいどんな日なのでしょうか? 簡単に調べてみました。

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1、庚申の日は一晩中起きていなければならない。

人間には生まれたときから「三尸(さんし)」という悪虫が体内にいて、隙(すき)があれば人間に害を加えようとしています。庚申の夜は、人が眠っている間に、その人の罪過を天帝(帝釈天?)に告げて命を失わせる、と言われています。なので、庚申の夜は、一晩中起きていなければならないのです。

2、三尸(さんし)ってどんな虫?

上尸(じょうし)→頭の中に住み、眼をくらくし、顔のシワを作り、髪の色を白くさせます。(「彭候子」(ほうこうし)といいます)

中尸(ちゅうし)→腸の中に住み、五臓を損ない、悪夢を見させ、みだりに飲食を好ませる。(「彭常子」(ほうじょうし)といいます)

下尸(かし)→足に住み、命を奪い、精力を悩ませる。(「命児子」(めいこし)といいます)

これらの虫が庚申の夜は、特に活発に活動するということです。

3、庚申の夜の過ごし方は?

庚申の夜には。寝ないで三尸の名前を呼ぶと、禍いから逃れて福を招くことができると考えられました。お堂や集会場に集まって、徹夜でお菓子やお茶を飲みながらおしゃべりをする風習があります。この日には男女の同衾もタブーになっていて、この夜に身ごもると、生まれた子供は「鬼子」になって親を食い殺すといわれているのだそうです。

4、どうして庚申の風習が生まれた?

中国の老子思想(道教)からきているようです。では、なぜ庚申の日に限って三尸が活発に活動するのかというと、よくわからないのが本当のところです。たとえば、節分の日になぜ豆をまくのか、子供の日になぜ粽を食べるのかと同じように、昔からの民間信仰という以外にないのです。

5、庚申を逃れるには?

三尸を駆除する呪文がありました(参考のために書いておきます)

彭候子、彭常子、命児子、悉入窈冥之中、去離我身』 (ほうこうし、ほうじょうし、めいこし、しつにゅうようめいしちゅう、きょりがしん)

意訳:彭候子、彭常子、命児子よ、ことごとく暗闇に消え失せて、わが身を離れてくれ。

どうしても寝てしまいそうな時は、

しやむしは、いねやさりねや、わがとこを、ねたれぞねぬぞ、ねねどねたるぞ

意訳:三尸の虫は、私のところを去って行けよ。寝てるように見えるけど寝てないぞ。寝てないけど寝てるぞ。

という呪文を唱えると、禍いから逃れることができるのだそうです。

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ところで、庚申に関連してくくり猿というのがあります。くくり猿とは、おサルさんが丸まっているように見えるお守りで、庚申の「申」が「さる」を表わしているところからきています。庚申の日には寝ないで一晩を過ごします。この夜にあった出来事はおおっぴらにするものではありません。つまり、一晩中おとなしく「見ざる、言わざる、聞かざる」を心掛けなければなりません。これを三猿(さんえん)といい、三尸と『』つながりで結びついて、そして天帝に告げ口をしないようにくくられているのです。

京都には日本三大庚申のひとつ「八坂庚申堂」があります。そこでは、いまでも庚申の日に信者が集まって、一晩寝ないで過ごす「庚申待ち」が行われているのだそうです。境内にはくくり猿がいっぱいあります。

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庚申の風習は、怖い話のようで、どこかユーモラスです。

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