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2012年7月24日 (火曜日)

倦夜(杜甫)

倦夜(杜甫)

【けんや】(とほ)

を鑑賞します。

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竹涼侵臥内(ちくりょう がないをおかし)

野月満庭隅(やげつ ていぐうにみつ)

重露成涓滴(ちょうろ けんてきをなし)

稀星乍有無(きせい たちまちにうむ)

暗飛蛍自照(くらきにとぶほたるは みずからをてらし)

水宿鳥相呼(みずにやどるとりは あいよぶ)

萬事干戈裏(ばんじ かんかのうち)

空悲清夜徂(むなしくかなしむ せいやのゆくを)

意訳:

竹林の涼しさは寝室にやってきて、月あかりは庭の隅々まで満ちている。草葉の露は重なり合ってしずくとなり、見上げれば星がまばらにまたたいている。暗きに飛ぶ蛍は自分だけを照らし、水鳥たちは互いに呼び合って鳴いている。

(なんてすばらしい夜だろう。なのに…)

すべては戦いの中の出来事でしかない。清らかな夜が更けてゆくのを空しく悲しむばかりだ。

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この詩、戦乱を逃れた杜甫が53歳のときに成都の草堂で作ったものだそうです。

一句から六句まで、まわりの風景を淡々と綴る対句です。

竹涼侵臥内 野月満庭隅 で『竹』と『月』、『臥内』と『庭隅』

重露成涓滴 稀星乍有無 で『露』と『星』、『重』と『稀』

暗飛蛍自照 水宿鳥相呼 で『蛍』と『水鳥』、『自照(光)』と『相呼(音)』

庭を見たり空を見上げたり、目を凝らしたり耳をすましたり、素晴らしい詩の展開です。さすが杜甫! と思わせます。そして、

萬事干戈裏 空悲清夜徂 

なんということでしょう! この美しい詩の風景が、すべて、戦争のさなかだったとは。

自然を象徴する『清夜』と、人間を象徴する『干戈』と、作者の言いたいのはそこにあることに気づかされます。

蒸し暑い夏の夜、この詩を口ずさむと涼しくなる気がします。読む者を透き通った心にさせてくれます。

※参考:「杜甫ノート」吉川幸次郎著(新潮文庫)

【332】

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