« 「古川柳おちぼひろい」&「古川柳ひとりよがり」を読んで | トップページ | 八文で家内が祝ふ氷かな(一茶) »

2012年7月17日 (火曜日)

胡笳歌 送顔真卿使赴河隴(岑参)

胡笳歌 送顔真卿使赴河隴(岑参)

【こかのうた がんしんけいのつかいして かろうにおもむくをおくる】(しんじん)

を鑑賞します。

ーーーーーーーーーー

君不聞胡笳声最悲(きみきかずや こかのこえもっともかなしきを)

紫髯緑眼胡人吹(しぜんりょくがんの こじんふく)

吹之一曲猶未了(これをふいて いっきょくなおいまだおわらざるに)

愁殺楼蘭征戌児(しゅうさつす ろうらんせいじゅのじ)

涼秋八月簫関道(りょうしゅうはちがつ しょうかんのみち)

北風吹断天山草(ほくふうすいだんす てんざんのくさ)

崑崙山南月欲斜(こんろんさんなんに つきななめならんとほっすれば)

胡人向月吹胡笳(こじん つきにむかってこかをふく)

胡笳怨兮将送君(こかのうらみ まさにきみをおくらんとす)

秦山遙望隴山雲(しんざん はるかにのぞむろうざんのくも)

辺城夜夜多愁夢(へんじょうやや しゅうむおおし)

向月胡笳誰喜聞(つきにむかうこか たれかきくをよろこばん)

※胡笳=西域の笛

※河隴、楼蘭、簫関、天山、崑崙山、隴山=西域&西域に向かう途中の地名、山名

※秦山=長安の南の山

意訳:

君も聞いて知っているだろう、胡笳の音がこの上なく悲しいということを。紫のヒゲと緑の眼をした胡人が吹くのだ。胡笳の曲がいまだ一曲終わらないうちに、楼蘭に出征する兵士たちは深い悲しみに包まれる。涼秋八月に簫関の道を行けば、北風が天山の草を吹きすさぶ。崑崙山の南に月が傾こうとするとき、胡人は月に向かって胡笳を吹く。そんな胡笳の怨みをもって君を送ろうとする今、秦山から遙かに隴山の雲を望むことができる。辺境の町では毎夜毎夜愁いの夢をみることだろう。月に向かって吹く胡笳の音を、喜んで聞く者などだれもいないのだ

ーーーーー

この詩、書の名手としても有名な顔真卿が西域へ赴任するときに、友人の詩人、岑参が詠んだものだそうです。胡人が吹くという胡笳の悲しい音色にたとえて、辺境の地へと向かう顔真卿の前途を気づかっています。私は読み下し文でしか鑑賞できませんが、詩の表現方法としては「」の発音が多いことが特徴です。それは名詞だけでも

シゼン(紫髯)、リョクガン(緑眼)、コジン(胡人)、ロウラン(楼蘭)、ショウカン(簫関)、スイダン(吹断)、テンザン(天山)、コンロン(崑崙)、サンナン(山南)、シンザン(秦山)、ロウザン(隴山)

が挙げられ、声に出して読んでみればよくわかります。

紫髯緑眼の胡人吹く

とか

北風吹断す天山の草

とか

秦山遙かに望む隴山の雲

などは、語感としてすばらしいと思います。出征する友人を鼓舞しつつも、全体として詩の調子を悲しく沈んだ印象にしています。口ずさんで鑑賞したい詩のひとつです。

ーーーーー

【胡笳の歌 顔真卿の使いして河隴に赴くを送る】(岑参)

君聞かずや胡笳の声最も悲しきを

紫髯緑眼の胡人吹く

之を吹いて一曲猶未だ了らざるに

愁殺す楼蘭征戌の児

涼秋八月簫関の道

北風吹断す天山の草

崑崙山南に月斜めならんと欲すれば

胡人月に向かって胡笳を吹く

胡笳の怨み将に君を送らんとす

秦山遙かに望む隴山の雲

辺城夜夜愁夢多し

月に向かう胡笳誰か聞くを喜ばん

【325】

« 「古川柳おちぼひろい」&「古川柳ひとりよがり」を読んで | トップページ | 八文で家内が祝ふ氷かな(一茶) »

勝手に鑑賞「古今の詩歌」」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 胡笳歌 送顔真卿使赴河隴(岑参):

« 「古川柳おちぼひろい」&「古川柳ひとりよがり」を読んで | トップページ | 八文で家内が祝ふ氷かな(一茶) »