鳥の文かた田の雁よ片便り(芭蕉・存疑の部)
堅田落雁
【鳥の文かた田の雁よ片便り】(とりのふみかたたのかりよかたたより)
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芭蕉俳句集(岩波文庫)をぱらぱらとめくっていたら、存疑の部に見つけて、思わず「ぷっ」と吹き出してしまいました。句の背景を想像するに…
近江八景のひとつに堅田落雁があります。広重の浮世絵にも描かれているように、琵琶湖畔の浮御堂に向かって、雁の群れが列をなして舞い降りていきます。句の作者は堅田にいて、どこか遠方に手紙を書いたのでしょうか。返事を待っていると、雁の群れがやってきました。「雁とともに返事が届くかな」と、さらに待ち続けたものの、結局なしのつぶてでした。「やっぱり堅田から手紙を出したのがまづかったなぁ。堅田だけに片便り(堅田より)だったわいな」
(堅田、浮御堂)
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というわけで、存疑の部とはいえ、芭蕉の句かもしれないっていうのがおもしろいですね。「松島やあぁ松島や松島や」、「花の山二町のぼれば大悲閣」などと一緒で、地名の入った句を芭蕉作にしておけば、何かいいことでもあるのでしょうか。いっそのこと、この句を宣伝に使って、堅田名物「片便り」 っていう和菓子でも開発してみようかな? 有名な落雁に負けないくらい売れるかもしれません(笑)
調べてみたら、古典落語の「近江八景」に、『文の便りも堅田より…』という言葉がありました。もしかしてこの句とも関係あるのでしょうか。
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