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2012年8月29日 (水曜日)

鬼すだく戸隠のふもとそばの花(蕪村)

ある人に

集く

と書いた紙を見せられて

「なんと読むか知ってますか?」

と聞かれました。

「え? 『』に『』…、はて? 『つどう』なら『』だし、もちろん『あつまる』でも『あつめる』でも『しゅう』でもないし。わからないなぁ。降参するから教えてよ」

すると相手は、ここぞとばかりにウンチクを語りはじめました。

ーーーーーーーーーー

「これは『すだく』と読みます。虫などが集まってにぎやかに鳴くこと。群れをなして集まる、群がることです。蕪村

【鬼すだく戸隠のふもとそばの花(おにすだくとがくしのふもとそばのはな)

の句があります。どういう意味かというと、戸隠とは地名で、信州の北の端、越後との国境の山の名です。その山には、美女に化けた鬼を平維茂(たいらのこれもち)が退治したという伝説があります。興味があれば、謡曲「紅葉狩」を調べてみてください。どのような話かがわかります。蕪村の句は

鬼が集まって騒ぐという戸隠山のふもとには、いま蕎麦の(白い)花が咲き誇っているよ。

ということです。季語はそばの花です。この句、まず戸隠の鬼女伝説を知らないと、理解できません。そして『すだく(集く)』と『そばの花』の取り合わせに蕪村の表現のうまさが出ています。俳句では普通すだくといえば虫で、『虫すだく』は季語にもありますが、『鬼すだく』はおもしろい。この言い方、伊勢物語にもあります。たくさん集まってすだくのは鬼とそばの花の両方でしょうね。そばの花は白です。そして、あえて鬼に色をつけるならば黒、またイメージとして浮かぶのは青か赤でしょう。色彩の対比の妙です。「集まる」でも「集う」でも「群れる」でもなく、すだくと表現したのは蕪村の手柄です。言葉の使い方として、実にうまいもんです」

彼は、コメントを用意してきたかのように、ここまで一気に語りました。私は、

「なるほどね。たしかにうまく詠めてるね」

としか、答えられませんでした。

まぁ、蕪村にしてはそんなにいい句とも思えなかったのですが、あまりに熱心に語るので、記事にしてみた次第です(笑)

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