歳月不待人(陶淵明)
中国六朝時代の詩人、陶淵明(365~427)の雑詩其一を鑑賞します。
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【雑詩其一】(ざっしそのいち)
人生無根蔕(じんせいはこんていなく)
飄如陌上塵(ひょうとしてはくじょうのちりのごとし)
分散逐風轉(ぶんさんしかぜをおっててんじ)
此已非常身(これすでにつねのみにあらず)
落地為兄弟(ちにおちてけいていとなる)
何必骨肉親(なんぞかならずしもこつにくのしんのみならん)
得歓當作楽(かんをえてはまさにたのしみをなすべし)
斗酒聚比鄰(としゅひりんをあつむ)
盛年不重来(せいねんかさねてきたらず)
一日難再晨(いちじつふたたびあしたなりがたし)
及時當勉励(ときにおよんでまさにべんれいすべし)
歳月不待人(さいげつはひとをまたず)
(意訳)
人生には根もヘタ(蔕)もなく、舞い上がるチリ(塵)のようなものだ。バラバラに風に飛ばされて、もとの状態を保ちえない。地に舞い落ちたところに兄弟が生まれるのだから、肉親だけにこだわる必要はない。うれしいときには心ゆくまで楽しまなくてなならない。酒をたっぷり用意して近所の人々を集めよう。若い時は二度とは来ない。一日のうちに二度の朝はない。楽しめるときには大いに楽しもう。歳月は人を待ってはくれない。
この詩、陶淵明が五十歳のころの作品といわれています。中でも、終わりの四句に共感を覚える方が多いかと思います。
『盛年重ねて来らず、一日再び晨なり難し、時に及んで当に勉励すべし、歳月は人を待たず』
いいですねぇ。人生の終盤を迎えつつあるさびしさの中に、まだまだがんばれるぞ、というヒソカな決意が見えています。まさに初老おじさんの心を揺さぶります。
李白の「将進酒」、杜甫の「曲江二首」など、みな同じようなことを言っています。これらの詩が、千数百年を経ても人口に膾炙しているのは、人生ってそんなに変るもんじゃないということなんでしょうね。いい詩だなぁ。こういう詩は、心の支え、励みになりますよね。
というわけで、これからもブログ書き、がんばろうっと(笑)
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人生は根蔕無く
飄として陌上の塵の如し
分散し風を逐って転じ
此れ已に常の身に非ず
地に落ちて兄弟と為る
何ぞ必ずしも骨肉の親のみならん
歓を得ては当に楽しみを作すべし
斗酒比隣を聚む
盛年重ねて来らず
一日再び晨なり難し
時に及んで当に勉励すべし
歳月は人を待たず
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