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2012年9月10日 (月曜日)

わがせこが来べきよひなりさゝがにの蜘蛛のふるまひかねてしるしも(衣通姫)

ある日の夕暮れ、早い目のお風呂に入って小窓の外を見ると、何かが動いています。

3801(中央にいます)

見れば1cmほどの大きさのクモ(蜘蛛)です。ふと、表題の歌を思い出しました。この歌、日本書紀古今集に、ほぼ同じ形で載っています。

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わがせこが来べきよひなりさゝがにの蜘蛛のふるまひかねてしるしも(古今集1110)

(わがせこがくべきよいなりささがにのくものふるまいかねてしるしも)

意訳:今宵はいとしいカレが来てくれそうだわ。(ささがにの)クモの動きがそれを教えてくれている。

古今集には「衣通姫の独りゐて帝を恋ひ奉りて」との前書きがあります。衣通姫は、第19代允恭(いんぎょう)天皇の夫人で、絶世の美女でした。あまりにも美しく、着ていた衣を通して輝いて見えるので、「衣通姫(そとおりひめ、または、そとおしひめ)」と呼ばれていたと日本書紀にはあります。また、衣通姫には忍坂大中姫(おしさかのおおなかつひめ)という允恭天皇の皇后で、嫉妬深い姉がいました。そのため天皇は皇居とは別のところに住まわせておられた、というのも日本書紀の記述です。古今集の前書きは、『衣通姫が天皇の来られるのを、ひとり恋しく思っておられるとき(お詠みになった)』ということです。

現在もクモは縁起担ぎの生き物として知られています。京都でも「朝グモは験(ゲン)がええけど、夜グモは験が悪い」と言います。どうしてそういうことを言うのか少し調べましたが、納得いくような説明にはたどりつきませんでした。ただ、いずれも来客に関するものが多く、その中から、これは、と思った説を二つ紹介してみます。

①、もともと中国に、クモが人の衣に着くと親しい人の来客があるという言い伝えがあり、縁起のよい俗信として日本に伝わった。

②、クモは、おおむね好天になる前の夕方(湿度の変化を感じるらしい)に巣をかけて、夜に獲物を狙う。なので、朝グモの現れるのは晴天で、人間も晴れの日を好む。

①説は、表題の歌が、まさにそのことを言っています。衣通姫は、おそらく自分の衣服にクモがついているのを見つけて、「あら、これは縁起がいい。帝が来られるわ」と思ったに違いありません。歌では「来べき宵なり」となっているので、朝グモではなく疑問とされますが、かつては、クモの出現そのものが縁起のよいことだったのではないでしょうか。そして、②説には、科学的裏付けのようなものを感じます。特に朝グモに縁起を担ぐようになった原因として真実味があります(ただ、ホントに晴れの日が多いのか、真偽のほどは明らかではありません)

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さて、このおじさん、これはいいブログネタが見つかったと、ハダカのまま、しばらくクモの動きを追いかけていましたが、次の瞬間、ハッとして、

「あ! このクモ、もしかして最近世間を騒がしているセアカゴケグモではないのか! これは噛まれたら大変だ」

とあわててしまいました。

3802

で、目を凝らしてよく見てみると、新聞に書いてあったような特徴的な赤い背中ではありません。ごく普通のクモのようで、ホッと胸をなでおろした次第です(笑)

【380】

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