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2012年9月 2日 (日曜日)

たち別れいなばの山の峰に生ふるまつとしきかば今帰り来む(在原行平)

古今集離別歌の巻頭、在原行平の歌を現代風に鑑賞します。

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たち別れいなばの山の峰に生ふるまつとしきかば今帰り来む

意訳:いまはこうしてお別れしますが、(因幡の国の)稲葉山に生えている松のように、待っているよと聞けば、すぐに帰って来ましょう!

作者の在原行平(818~893)は、斉衡2年(855)38歳で因幡守に任ぜられました。現地に赴任した後、2年あまりで帰京したそうです。この歌は赴任する際に詠んだとする説が有力ですが、逆に任期を終えて京へ戻るときに詠んだとする説もあります。いずれにしても、今で言う送別会の席上で詠んだのでしょう。一読してダジャレの歌であることに気がつきます。それも、幾重にも掛け言葉がつながっています。

いなば』は、去って行くの意の「往なば去なば)」と、国名の「因幡」と、山の名前の「稲葉」の三つ。『まつ』は、「」と「待つ」の二つ。要するに、

立ち別れ往なば(去なば)因幡稲葉山待つ帰り来む

いやはや、三十一文字の中に、よくぞこれだけの言葉をかけたものです。感心します。

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想像するに、ここまでの連想を即興でまとめたとは考えづらいです。たぶん、宴会が始まるまえ、もしくは宴たけなわのときから

どうせ歌を所望されるから、考えておかないといけないなぁ。そうだなぁ。この際、掛け言葉をつなげてみるかぁ。因幡の国にちなんだものは…と。うんうん、どうやらできそうだ

と、推敲を繰り返したのではないでしょうか。宴会は大いに盛り上がり、

ここで、旅立って行かれる因幡守の行平さまからお歌を頂戴したいと思います

なんて幹事に言われて、「ほら来た」とばかりに、

たちわかれ~、いなばのやまのみねにおうる~、まつとしきかば~、いまかえりこん~

とやって、出席の年少の部下たちが

え? 何?、どういうこと? 意味がわからない

とざわつくと、

いや、この歌は、国名の因幡と往なば、木の松と待つを掛けて作ったんですが、ちょっとわかりにくかったですかね

と、頭を掻いて照れ笑いをしている行平さんの姿が眼に浮かびます。末席からは

もう帰って来なくてもいいよ

と、つぶやく声が漏れ、クスクス笑いが広がったりして。

でも最後には満場の拍手を浴びたんじゃないかなー。

現代サラリーマンの送別会事情を踏まえた勝手な鑑賞ですけど、上司というのは、いつの時代でもわけのわからないことを言うものです。部下は気を遣いますよね(笑)

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↑ちなみに、この松は、因幡の松ではありません。近所の松です。

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