静夜思(李白)
李白の五言絶句『静夜思』を鑑賞します。
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牀前看月光(しょうぜんげっこうをみる)
疑是地上霜(うたごうらくはこれちじょうのしもかと)
挙頭望山月(こうべをあげてさんげつをのぞみ)
低頭思故郷(こうべをたれてこきょうをおもう)
意訳:寝室に月の光がさしこんでいる。もしかして今夜は霜が降りたのかと思う。・・・頭を上げて山上の月を見、頭を下げて故郷を思う。
解説本でもネットでも、この詩を絶賛する人が絶えません。谷崎潤一郎の文章読本の解説は、私も読んで感激しました。もう、鑑賞し尽くされているかと思うのですが、それでもブログに何か書いておきたくなる詩のひとつです。
『牀前月光を看る、疑うらくは是れ地上の霜かと』
このリズム、すばらしいです。李白が対峙している静夜の風景が目に浮かびます。次の三・四句の対句の前に、ちょっとした間(ま)があるんですね。作者は、寝床にさしこむ月光の美しさに、まるで霜かと思った・・・呆然として視線が定まらない・・・と次の瞬間、ハッとします。
『頭を挙げて山月を望み、頭を低れて故郷を思う』
この展開力! 表現力! 言うならば明と暗、動と静、陽と陰、剛と柔、強と弱、表と裏、前と後、そして上と下。まさに韻文です。声に出してつぶやけば、思わずアタマを上げたり下げたりしてしまいます。万人共通の詩心を、単純な言葉に集約しています。李白の詩の真骨頂です。
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牀前月光を看る
疑うらくは是れ地上の霜かと
頭を挙げて山月を望み
頭を低れて故郷を思う
【403】
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