竹里館(王維)
王維の五言絶句「竹里館」を鑑賞します。
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独坐幽篁裏(ひとりざすゆうこうのうち)
弾琴復長嘯(だんきんまたちょうしょう)
深林人不知(しんりんひとしらず)
明月来相照(めいげつきたってあいてらす)
(意訳)
うっそうとした竹やぶの中にひとりすわり、琴を弾き、長く声を引いて詩をうたう。深い林なのでだれも知らない。明月だけが私を照らしてくれている。
静かないい詩です。訓読すると押韻のよさがわからなくなります。ただ、「幽篁」と「長嘯」、「弾琴」と「深林」が、韻を踏んでるかのように読む者の心に迫ります。そのためにも、二句目は「琴を弾じ」と読むのではなく「弾琴(だんきん)」と読みたいです。
この詩でいつも気になるのは、竹やぶの中に座っていてやぶ蚊が飛んでこないのかな、ということです。季節はたぶん春から秋のいずれかでしょう。蚊に刺される季節です。王維の当時はエアコンもなかったから、竹里館の窓は開け放たれていたでしょう。もしかして網戸があった? それとも蚊帳の中? まさか蚊取り線香を焚いていたとも思えないし…、耳元に「ぶ~ん」と羽音が聞こえてきて、手で払いのけている王維の姿を想像してしまいます。
とまぁ、そんなことまで考えるのも勝手な鑑賞のひとつですね(笑)
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独り坐す幽篁の裏
弾琴また長嘯
深林人知らず
明月来たって相照らす
【455】
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