秋の暮辻の地蔵に油さす(蕪村)
蕪村の句
【秋の暮辻の地蔵に油さす】
を鑑賞します。
(意訳)秋の夕暮れ時、あたりが少しずつ暗くなっていく中、辻のお地蔵さんの灯明に油をつぎ足していく。
この句で印象深いのは「つぎ足す」という意味での油さすという行為です。辻のお地蔵さんの灯明に油をつぎ足していく作業は、現代の生活ではピンときません。京都の町には、いまでもところどころの辻にお地蔵さんを見かけます。たいていは街灯に照らされていて、灯明がつけられているのは少ないです。蕪村のころはお地蔵さんが街灯代わりになっていたのでしょうか。防犯のためというより、むしろ夕暮れの寂しさをまぎらすために、常灯の光を強くしようとしていたのかもしれません。
辻の地蔵に油さす…どことなしにノスタルジーを感じます。
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