私が電車に乗り遅れた理由(再現)
ある休日の朝、私は電車に乗ろうと駅に急ぎました。自宅で手間取ってしまい、ギリギリの時間です。乗り継ぎの関係もあり、その電車に乗り遅れると到着が30分遅くなります。その日は、いささか大切な待ち合わせで、遅刻などもってのほかでした。
休日のせいか、ホームに人の姿はまばらでした。急いで来たので息が切れています。
「あぁよかった~。あと2分ある」
よいしょと愛用のザックをおろし、ベンチに腰掛けます。
いつものようにスマホを弄びます。しばらくして、定刻通りに電車がホームに入ってきました。スマホをポケットにしまい、頃合いをみて立ちあがります。右手でザックを取って肩にかけようとしたとき…、思いがけずグググッと大きな力がかかりました。
「うん? どうした?」
見れば、ベンチのすき間にザックの留め具がはさまっています。
留め具は、すき間を通り抜けて下へ落ちているようです。思いっきり引っ張ると、フックのように横に広がりました。
「ぎょぎょぎょ。取れへん~!」
思わず大きな声が出てしまいました。
数秒後、無情にもプシューと音がして電車のドアは閉まりました。
「あちゃー。」
降車した方が数人、クスクス笑いを浮かべながら横を通り過ぎていきます。あきらめた私は、もう一度スマホを手にとると、待ち合わせ相手に遅れる旨の連絡を入れました。落ち着いてベンチの下に手を回し、ゆっくりと留め具をはずします。
30分遅れて待ち合わせ場所に到着し、遅刻の理由を聞いた相手の方は、
「おそようございます! えらいもんに捕まったなぁ」
と、大笑いでした。
以来、私は、駅のベンチに腰掛けるとき、カバンやバックを横に置きません。必ず膝に抱えるか、足元に置くようにしています。
※以上、写真は再現です。どうぞみなさんもベンチのすき間にはお気をつけください。同じ遅刻でも、「後朝(きぬぎぬ)の別れ」で女性に引きとめられたというのなら、自慢話にもなりますが、駅のベンチに捕まって遅刻したというのでは、シャレにもなりませんからね。
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