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2012年12月19日 (水曜日)

志賀の浦や遠ざかりゆく波間より凍りて出づる有明の月(藤原家隆)

日に日に寒さが増してきました。

新古今集より

「摂政太政大臣家の歌合に、湖上冬月」

志賀の浦や遠ざかりゆく波間より凍りて出づる有明の月】(新古今集639)

(しがのうらやとおざかりゆくなみまよりこおりていづるありあけのつき)

を鑑賞します。

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(意訳)志賀の浦(大津付近の琵琶湖畔)の、岸辺から凍り、遠ざかっていく波間から冷たい光を放って出る有明の月。

この歌には本歌があります。

【さ夜更くるままにみぎはや凍るらむ遠ざかりゆく志賀の浦波】(後拾遺集419、快覚法師)

両歌を比べると、家隆の歌がはるかにすぐれています。厳冬の寒気極まった感です。順を追って、一句目から情景を思い浮かべながら鑑賞してみます。

志賀の浦や』・・・琵琶湖の浜辺を頭に描きます。志賀の浦は湖西です。現代人は、この段階ではたいてい夏の海水浴シーズンの景色をイメージします。

遠ざかりゆく』・・・頭の中で、風景をズームアウトします。

波間より』・・・はて? 遠ざかっていく波間? いったいどういうこと? まさか琵琶湖に津波でも来るのか?

凍りて出づる』・・・そうか。岸から湖面が凍っていくのか。実は、流氷が接岸したかのような真冬の景色だったのです。で、 凍って出るのは何?

有明の月』・・・月がのぼってきた。 遠ざかりゆくのは見た目の波だけでなく、波の音でもあったのです。シーンとした真冬の夜明け前に寒々とした有明の月。空想の世界とはいえ寒気が身にしみます。

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この歌は、一句から五句まで言葉の流れが順送りになっているため、まるで動画でも見るような不思議な印象を受けます。絵画的・象徴的といわれる、新古今調の特徴がよく出ています。

作者の藤原家隆は新古今集の撰者のひとりです。前書きにある摂政太政大臣というのは藤原良経のことです。題詠なので、実景に基づいた歌ではないのでしょうが、これはもう、極寒の風景を表現した歌としては最高のものです。

全体を理解した上でもう一度繰り返して読んでみると、あまりの寒さに、体がふるえてしまいました。

『しがのうらや とおざかりゆくなみまより こおりていづる ありあけのつき』

…あ~さぶぅ。

【480】

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