わが屋戸に黄変つ鶏冠木見るごとに妹を懸けつつ恋ひぬ日は無し(万葉集)
京都の紅葉もそろそろ終わりを告げようとしています。万葉集の歌を鑑賞します。
ーーーーーーーーーー
【わが屋戸に黄変つ鶏冠木見るごとに妹を懸けつつ恋ひぬ日は無し】(万葉集巻八・1623)
(わがやどにもみつかえるでみるごとにいもをかけつつこいぬひはなし)
意訳:私の家の黄色く変色するカエデを見るたびに、あなたを心に懸けて恋しく思わぬ日はありません。
この歌は、大伴田村大嬢が異母妹の坂上大嬢に与えた歌二首の内のひとつです。男女の恋の歌ではなく、姉妹の贈答歌です。自然現象をうまく取り入れた、素朴でわかりやすい表現がいいですね。妹を気にかける姉の、やさしい愛情に満ちています。また、万葉仮名で「黄変」を「もみつ」と読ませていることから、本来モミジとは黄色く変色することであったことがわかります。紅葉ではなく黄葉だったわけです。
(紅葉と黄葉)
カエデ(楓)は「蝦手(蛙手)」の略で、カエルの手と形が似ていることから名前がついたのだそうです。また鶏冠木とも書くのは、ニワトリのトサカにも似ているからです。
蝦手(カエルテ)・鶏冠木(カエデ)=楓(カエデ)
京都市の隣、向日市に「鶏冠井」と書いて「かいで」と読む地名がありますが、こちらは「かえでい」が「かいで」に変化したともいわれています。
【467】
« 楓橋夜泊(張継) | トップページ | 知る者は言わず、言う者は知らず。(老子) »
「 季節の話題」カテゴリの記事
- たまたま出会った…、時代祭の行列。(2013.10.22)
- 我が家に居所捜す暑さかな(宋屋)(2013.07.17)
- 鉾処処にゆふ風そよぐ囃子哉(太祇)(2013.07.12)
- 思ふことみなつきねとて麻のはをきりにきりても祓へつるかな(和泉式部)(2013.06.25)
- 近衛邸跡の糸桜(京都御苑内)(2013.03.23)
「 勝手に鑑賞「古今の詩歌」」カテゴリの記事
- 夏風邪はなかなか老に重かりき(虚子)(2014.05.21)
- 後夜聞仏法僧鳥(空海)(2014.05.20)
- 夏といへばまづ心にやかけつはた(毛吹草)(2014.05.19)
- 絵師も此匂ひはいかでかきつばた(良徳)(2014.05.18)
- 神山やおほたの沢の杜若ふかきたのみは色にみゆらむ(藤原俊成)(2014.05.17)
岡山県鏡野町の「へこくら」という地域にこの歌を刻んだ碑が立っていました。
ぜんぶひらがなだったのでまったくなんのことかわかりませんでした。
やっぱり漢字で書いて、ふりがなか注釈をつけてほしいです。
おかげですっきりしました。
投稿: | 2023年10月29日 (日曜日) 17時48分
検索から来ました、なるほど!そういうことだったんですね!役に立ちました、ありがとうございます!
投稿: 茎 | 2019年11月16日 (土曜日) 15時38分