知る者は言わず、言う者は知らず。(老子)
老子五十六章を解釈し、鑑賞してみます。
ーーーーーーーーーー
知者不言、言者不知。
(知る者は言わず、言う者は知らず。)
塞其兌、閉其門、挫其鋭、解其紛、和其光、同其塵、是謂玄同。
(その穴を塞いで、その門を閉ざし、その鋭を挫いて、その紛を解き、その光を和らげて、その塵に同ず。是れを玄同という。)
故不可得而親、不可得而疎、不可得而利、不可得而害、不可得而貴、不可得而賤。
(故に得て親しむべからず、得て疎んずべからず、得て利するべからず、得て害すべからず、得て貴ぶべからず、得て賤しむべからず。)
故為天下貴。
(故に天下の貴きものと為る。)
意訳:本当にわかっている者はしゃべらない。よくしゃべる者はわかっていない。(本当にわかっている者は)耳目を塞いで、外界との交渉を閉ざし、自身の鋭さを挫いて、もめごとを解きほぐし、光る自分の知恵をやわらげて、世の中の塵に同化する。これを「玄同」という。だから、まわりから親しまれることもなければ、疎まれることもなく、利用されることもなければ、妨害されることもなく、貴ばれることもなければ、賤しく扱われることもない。だからこそ、天下で最も貴い者になる。
ーーーーーーーーーー
大変含蓄のある言葉です。はじめの「知る者は言わず。言う者は知らず」だけで、なるほどいいことを言うものだ、と直感します。
能ある鷹は爪を隠す。
雄弁は銀、沈黙は金。
ある意味、世渡りのコツかもしれません。
【468】
« わが屋戸に黄変つ鶏冠木見るごとに妹を懸けつつ恋ひぬ日は無し(万葉集) | トップページ | 大帝について。 »
「 古典より」カテゴリの記事
- 五条の天神(京童より)(2014.04.12)
- 歌も詩も細字にかゝん花の友(京童より)(2014.03.26)
- 鏡石(都名所図会より)(2014.03.28)
- なさけなく折る人つらしわが宿のあるじ忘れぬ梅の立ち枝を(天神御歌)(2014.03.06)
- 比叡山に登るとき、弁当に「魚」を入れるのは禁物?(2014.02.24)
コメント