斧入て香におどろくや冬木立(蕪村)
蕪村の句
【斧入て香におどろくや冬木立】(おのいれてかにおどろくやふゆこだち)
を鑑賞します。
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(意訳)葉をすべて落とした冬木立には、もはや生気は感じられぬ。その一本に勢いよく斧を打ち込むと、意外や意外、新鮮な木の香りが漂ってきた。枯れたこの季節にも、木はしっかり生きている。驚くべき生命力だ。
本来、俳句に「驚く」といった感情を直接あらわすような動詞を使うと、余情がなくなって興ざめてしまうものですが、この句に関しては逆に成功しています。耳で聞く「斧」の音、鼻で嗅ぐ木の「香」、そして見渡す「冬木立」と、三感を刺激された中に「驚く」蕪村がたたずんでいます。実際、木に斧を入れるような経験がなくとも、蕪村の興奮は十分に伝わってきます。こういう発見を句にできる蕪村の感性に、むしろわれわれ鑑賞者がおどろきます。
【478】
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