ふく汁の君よ我等よ子期伯牙(蕪村)
蕪村の句
【ふく汁の君よ我等よ子期伯牙】(ふくじるのきみよわれらよしきはくが)
を鑑賞します。
意訳:フグ汁を一緒に食べる君と僕、これはもう死をともにするくらいの親友同士だ。「伯牙絶弦」で知られる、あの子期と伯牙のように。
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蕪村にはフグ(河豚、鰒、ふく、ふくと汁など)を詠んだ句が多くみられます。子期・伯牙はともに人の名前で、伯牙絶弦(はくがぜつげん)という四字熟語で知られます。琴の名人の伯牙(はくが、「伯」が姓で「牙」が名)は、友人の鍾子期(しょうしき、「鍾」が姓で「子期」が名)が亡くなってから二度と琴を弾かなくなりました。鍾子期は伯牙のよき理解者だったのです。親友を「知音(ちいん)」と呼ぶのはここからきています。
『フグといえば冬の味覚。美味だが毒が怖い。まかり間違えば最後の晩餐にもなりかねない。死をも覚悟の上でチャレンジする限りは、君と僕、まさに子期と伯牙の関係だ。親友以外のなにものでもないよ』
というようなニュアンスでしょうか。おそらく今回の相手はフグを食べるのが初めてで、蕪村は脅かしの意味をユーモアに込めて大げさに言ったようです。それにしても「君よ我等よ」とは、なんとオシャレな表現でしょう。蕪村には「北寿老仙をいたむ」という近代詩のはしりのような作品がありますが、この句にも気高い気品を感じます。
(蕪村の句は、典故を知らなければ何を言っているのかわからないことが多いです。蕪村の句を解釈することは、古典を知ることにも直結するので、当ブログでは頻繁に取り上げています)
【510】
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