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2013年1月30日 (水曜日)

凩の地にもおとさぬしぐれ哉(去来)

向井去来の句、

凩の地にもおとさぬしぐれ哉】(こがらしのちにもおとさぬしぐれかな)

を勝手に鑑賞します。

意訳:突然雲行きが怪しくなり、時雨がバラバラと降ってきた。同時に木枯らしがサッと横殴りに吹き払った。下から吹き上げて来る風に雨粒は地面に落ちるどころか、どこかへ飛んでいってしまった。すさまじい天候急変である。

ーーーーー

よく知られているように、この句、もともとは「地までおとさぬ」だったのを、芭蕉が添削して「地にもおとさぬ」と直したことが、去来抄(先師評)に書いてあります。

『…汝が句ハ何を以て作したるとも見えず。全体の好句也。ただ地迄とかぎりたる迄の字いやしとて、直したまひけり。初は地迄おとさぬ也

いくつかの解説本を噛み砕いて表現すると、「地まで」ならば、吹きすさぶ木枯らしの作用によっても、降る雨はどこまでも上下の動きであり、横への広がりが感じられないのに対して、「地にも」となると、雨粒は上下だけでなく前後左右の空間への動きを感じる、ということらしいです。たしかにそう言われてみるとそうかなと、素人にも納得できるところではあります。

ここで添削の理由である下線の「いやし」が私にはもうひとつわからないです。「気品がない」「味わいがない」という意味に解釈されているようですが、辞書を引けば、現代語でも古語でも「身分が低い」「下品」「みすぼらしい」という【卑し】【賤し】で、そのまま芭蕉が言ったとするならば、ちょっと言い過ぎではないかと思うのです。「地までおとさぬ」でも、そこまでひどい句柄とは思えません。まして「全体の好句也」と去来をほめているのです。お前の勉強不足だと言われればそのとおりですが、弟子の去来が自らを卑下して書いているのか、それともただの言葉の綾なのか。

このおじさん、芭蕉さんが好きなだけに、「いやし」という言い方には何かひっかかるんですよねぇ(苦笑)

【522】

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