山茶花を椿ときくも草枕(成田蒼虬)
天保期の俳人成田蒼虬(なりたそうきゅう)の句、
【山茶花を椿ときくも草枕】(さざんかをつばきときくもくさまくら)
を鑑賞します。
(山茶花)
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(意訳)
冬の旅にでかけた蒼虬宗匠は、とある町を散策していた。真っ赤な花を咲かせる垣根の横にさしかかる。通りすがりの人の声が聞こえる。
「きれいな椿が咲いている。寒椿だな」
宗匠が見れば、花びらがバラバラに散っている。あれ? 椿ならば首から落ちるはずだ。
(違うよ。これは椿ではなく山茶花だ。この人わかってないな。まぁ、せっかく風情を感じておられるのに、口出しすることもなかろう。これも旅の思い出、黙ってることにするか…)
とはいえ、どこか気になって仕方がない。しばらくして、ふと同行の衆につぶやいた。
「『さざんかを つばきときくも くさまくら』 ハハハ、いかがかな」
というような場面を想像します(笑)
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成田蒼虬といえば、桜井梅室とともに天保期の月並調を代表する俳人といわれます。この句にしても、「椿ときくも」の「も」と、「草枕」という枕詞との取り合わせが、いかにも月並臭を漂わせています。でも、それはそれで、人情味があっていいのではないでしょうか。
さて、上の写真、近所の山茶花を撮ったものです。結構たくさんの花が咲いていました。全部で九輪写っています。
(笑)
【520】
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