春雨や抜け出たまゝの夜着の穴(丈草)
数日来の寒波も去って、今朝は雨でした。春雨と言うには早いですが、一雨ごとに暖かくなっていくようです。今回は内藤丈草の句を鑑賞します。
【春雨や抜け出たまゝの夜着の穴】(はるさめやぬけでたままのよぎのあな)
(意訳)春雨の朝。遅くに起き出してはみたがやはり物憂い。見れば、自分が寝ていたあとが穴になって残っている。寝具を片づけるのも面倒なことだ。
↑要するに、こんな状態を詠んだものと思われます(笑)
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内藤丈草(1662-1704)は、尾張の生まれ。27歳で遁世し、京都で芭蕉に弟子入りをしました。入門して2年目に猿蓑の跋文を書くほど芭蕉に気に入られたようです。解説本によると「夜着」とは綿入り、襟・袖付きの大型掛け布団のことで、寝巻・パジャマのたぐいです。そうすると現代人には「抜け出たまゝの穴」がイマイチ想像しにくくなります。同想として、
【着てたてば夜るのふすまもなかりけり】(きてたてばよるのふすまもなかりけり)
(意訳)これを着ていれば、寝ても起きても(寝具も普段着も)一枚で済んでしまう。
の句がありますから、ズボラな人だったのは間違いないですね。「幾人かしぐれかけぬく勢田の橋」「うづくまる薬の下の寒さ哉」「我事と鰌のにげし根芹哉」などの句は佳句として知られています。
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