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2013年2月23日 (土曜日)

あはゆきのつもるつもりや砂の上(万太郎)

二月も終わろうとしています。今年の京都市内は例年に比べて雪の日が少ないようです。それでも、先日ちょっとした降雪がありました。今回は久保田万太郎の句を鑑賞します。

あはゆきのつもるつもりや砂の上】(あわゆきのつもるつもりやすなのうえ)

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(意訳)淡雪が砂の上に降っている。見ていると結構激しくなってきた。淡雪とはいえこれほどまでに降るのは、もしかして積るつもりなのだろうか?

意訳すると風情も何もありませんね(苦笑) 当ブログの鑑賞のポイントは3つです。

1、雪を「積るつもりや」と擬人化することによって、親近感と温かみを持たせている。

雪国の方はともかく、都会人に降雪は非日常の出来事です。雪が降ってきたというだけで、どことなく風情を感じます。「もっと降ってくれ」という気持ちがあったのか、「まだ降るのか」と言いたいのか、どちらともとれますが、いずれにしても、雪に親近感を持ち、降雪量に雪自身の意図を感じた作者の発見があります。一句詠みたくなった心の発露でもあるのでしょう。

2、淡雪の縁語を置いて、はかなさを演出している。

淡雪を手に受けてもすぐに融けてしまいます。砂を手に取れば指の間からさらさらと流れてしまいます。どちらもとどまることなく流れ去って行く象徴です。はかない情緒を醸し出しています。

3、積るつもりやの掛け言葉、同音の繰り返しが調子をよくしている。

思わず笑ってしまう、万太郎一流のユーモアです。「あわゆきのつもるつもりや」までをひらがなで書いているところが、いかにも万太郎調です。淡雪→積るつもり→砂の上。一連の流れは、さりげなく詠んでいるようで深い技巧をこらしています。

久保田万太郎の俳句にはストーリー性があって、客観写生の句とは一味違う情緒を感じるものが多くあります。この句以外にも、たとえば、

【竹馬やいろはにほへとちりぢりに】

【人のうへやがてわがうへ蛍とぶ】

【蕎麦よりも湯葉の香のまづ秋の雨】

【湯豆腐やいのちのはてのうすあかり】

などが挙げられます。これらの句は、目で追ってみて言葉の用い方や文字の使い分けに感激し、声に出してみてリズムのよさ調子のよさに感動です。ホント、上手に詠むものです。「さすが万太郎。うまいもんだねぇ!」というホメ言葉がぴったりの佳句ばかりです。

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