からたちはやがてそのままきこくかな(細川幽斎)
太閤秀吉が朝鮮出兵したとき、細川藤孝(幽斎)に俳諧の発句を求められ、庭前にカラタチの木があったのを即興で詠んだという句を鑑賞します。
【からたちはやがてそのままきこくかな】
意訳:今回の唐立ち(朝鮮出兵)は何の苦もなく成功し、やがてそのままキコク(帰国)されるでしょう。この庭のカラタチの木が、別名キコク(枳穀)と呼ぶように。
ーーーーー
なんですか! この句は(笑) 唐立ち=枳殻(カラタチ・キコク)=帰国 と、よくぞこんなに上手に言葉をつなげたものです。細川幽斎といえば、武将でありながら古今伝授を受けたという一流の歌人・文化人です。即興で詠んだというのですから、たいしたものです。言葉遊びもここまでくると、さすがに大先生の風格です。カラタチの名前は「唐橘(からたちばな)」からきているので、それなりに理にかなった句とも言えます。とはいえ、もしもこの句を現代のサラリーマンが宴会の座興でつぶやいたなら、オヤジギャグとして一笑に付されるでしょうね。せいぜい「ウマイ!」の一言で済まされそうです。記録に残ることはまず考えられません。
さて、京都市内でカラタチといえば東本願寺の別邸「渉成園」です。かつて、周囲をカラタチで囲んでいたので「枳穀邸(きこくてい)」とも呼びます。
現在も、一部カラタチの垣根が残っています。きれいに整備されていました。
【560】
« 富士に傍て三月七日八日かな(伊藤信徳) | トップページ | 遅き日のつもりて遠きむかしかな(蕪村) »
「 勝手に鑑賞「古今の詩歌」」カテゴリの記事
- 夏風邪はなかなか老に重かりき(虚子)(2014.05.21)
- 後夜聞仏法僧鳥(空海)(2014.05.20)
- 夏といへばまづ心にやかけつはた(毛吹草)(2014.05.19)
- 絵師も此匂ひはいかでかきつばた(良徳)(2014.05.18)
- 神山やおほたの沢の杜若ふかきたのみは色にみゆらむ(藤原俊成)(2014.05.17)
コメント