近衛邸跡の糸桜(京都御苑内)
京都にも桜の開花宣言が出ました(2013年3月22日) いよいよお花見シーズンだなと思っていると、
「御所の桜はもう満開近しやで」
と、ある人が教えてくれました。
「へぇ、ほんまに」
「そうやで。近衛桜いうて、だいたい早咲きやな。烏丸今出川から御苑に入ったらすぐわかるわ。御所の北側、池の横や」
なんでも京都御苑内の近衛邸跡に咲く桜なのだそうです。京都市内に住んでいながら、これまで知らなかったので、さっそくいそいそと出かけました。すると・・・、
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という印象でした。満開近しというか、もはや満開です。
※写真の字が次第に小さくなっているのは、このフレーズどこかで聞いたかな? と思い、つぶやいているうちに恥ずかしくなってきたからです(笑)
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さて、近衛邸跡に立て札があり、この桜の由緒とともに、孝明天皇御製の歌が書いてありました。せっかくですので鑑賞してみます。
【昔より名にはきけども今日みればむべめかれせぬ糸さくらかな】
意訳:(この近衛邸の桜は)以前から美しい桜だと聞いていたが、今日こうして見てみると、なるほど目の離せない、見飽きない糸桜であることよ。
わかりにくいのは「めかれせぬ」です。これはたぶん「目離れせぬ」で、目が離せない、飽きることがないという意味だと思います。それさえ読み解けば解釈は簡単で、初めて見た近衛邸の桜の素朴な印象を述べた歌です。歌であれ俳句であれ、作品には必ず作者の性格があらわれます。孝明天皇は素直で正直な方だったことがうかがえます。ただ、表現力はイマイチですね。三句目の「今日みれば」が不要というか、もうひとつパッとしません。
それにしても、孝明天皇がこの歌を詠んだと思われる幕末から約150年。近衛邸には「跡」の文字がつけられて、当時の風景は想像もできませんが、糸桜だけは今年も見事に咲き誇っていることに感動しました。
【574】
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