「金谷上人行状記」(横井金谷著)を読んで。
日本の自伝の中で、特に奇抜、かつ愉快といわれる、「金谷上人行状記 ある奇僧の半生」(東洋文庫)を読みました。
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金谷上人というのは近江の生まれ、正しくは横井金谷(よこいきんこく)といいます。宝歴11年(1761年)生まれで、天保3年(1832年)に72歳で没したといいますから、小林一茶とほぼ同時代の人です。自伝なのに「行状記」というタイトルがついているのは、一人称ではなく、第三者が書いたような形式をとっているからだと思われます。生まれてから40歳代までのエピソードを綴っています。上人というからにはお坊さんなのですが、その人生はまさに波乱万丈、若くして遊郭に通う、博打は打つ、喧嘩はする、何でもありの日々です。およそ仏に帰依する者の行状とは思えません。一所にとどまっていられない性格で行動範囲は広く、9歳で大阪の寺に修行に出されるや、江戸、京都、長崎、赤穂、名古屋と、全国各地を転々とします。ただ、自らも書いているように、仏道修行もそれなりにこなし、頭がよくて説教上手、人々に慕われるタイプの人物でもあったようです。旅先で妻帯、子供が出来てからしばらくは名古屋に落ち着きます。その後山伏になって大峰山に登り、あげくの果ては子供を連れて、無謀ともいえる季節外れの富士登山、という荒唐無稽なストーリーです。
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さて、京都市内にある上人ゆかりのお寺を訪ねました。
上京区、七本松通沿いの浄土宗「極楽寺」です。
本堂の扁額に「金谷山」とあります。金谷上人は若干二十歳で、このお寺の住職になりました。以来、山号をもって雅号としたのだそうです。
上人の生涯に感激した筆者は、門前で手を合わせるとともに、持参した本を開き、敬意を表した次第です。
(東洋文庫の「金谷上人行状記 ある奇僧の半生」は、現代語訳です(藤森成吉訳) また、森銑三著「傳記文學 初雁」(講談社学術文庫)に、「金谷上人御一代記」として、あらすじと解説があります)
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