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2013年4月10日 (水曜日)

春雨やしたたか銭の出た窓へ(一茶)

小林一茶の「七番日記(文化十五年三月)」に、

春雨やしたゝか銭の出た窓へ】(はるさめやしたたかぜにのでたまどへ)

という句があります。直訳すれば、「春雨が降っている。大量にお金の出た窓へ」ですが、現代人には難解で意味がわかりません。“銭の出た窓”ってどういうことでしょうか? 調べてみました。
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なんでも、中世から近世にかけて「窓銭(まどぜに・まどせん)」という税金があったのだそうです。家屋の窓の数に応じて課税するわけです。中でも江戸時代初期に九州島原を治めていた松倉氏が有名で、窓だけでなく、戸口、棚、囲炉裏等にも課税しました。子供が生まれれば「頭税」、死んで穴を掘って埋めれば「穴税」まで課したといいます。これらを通常の年貢のほかに徴収するのですから、たまったものではありません。島原の乱(1637)は、キリシタン弾圧に加えて、過酷な税の取り立てが引き起こしたというわけです。このような課税法は、主として地方の藩に多かったそうですから、一茶の時代の信濃にも、同様の税があったのでしょうね。

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文化十五年三月といえば、一茶五十六歳。故郷の信濃に居を定めて数年過ぎたころです。実家を改装でもしたのか、藩の役人が見分にやってきて窓の寸法を測ります。

『この大きさと数ならば、これこれの額になる。月末までに納めるように!』

予想外の税額に驚いた一茶、

『くそっ、こんなに取られるなら、窓は小さくて少なめにしておけばよかった』

と、春雨降り注ぐ窓を見つめての、恨みの一句です。「したたか」に怒りがにじみ出ています(笑) よほど腹に据えかねたのでしょう、七番日記のこの句の次には、

春雨や海見のみの窓年貢】(はるさめやうみみるのみのまどねんぐ)

とあります。二句連続の同想句で、こっちのほうは呆然自失、あきらめの境地です(笑)

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…いやいや、われわれも笑ってる場合ではないですね。来年からは消費税が8%になるのでした。窓銭でも所得税でも消費税でも、税額を聞いてムッとするのはいつの時代も同じようです。

参考:岩波文庫「一茶七番日記(下)」 (勝手な鑑賞であることをお断りしておきます)

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