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2013年4月30日 (火曜日)

あやまてばすなわちあらたむるにはばかることなかれ(論語)

子曰、君子不重則不威。学則不固。主忠信、無友不如己者。過則勿憚改(学而第一・8)

『子曰く、君子重からざれば則ち威あらず。学んでは則ち固ならず。忠信を主とし、己に如かざる者を友とすること無かれ。過てば則ち改むるに憚ること勿れ。』

(意訳)孔子(先生)がおっしゃった。「君子はどっしりしていなければならない。学ぶと頑なでなくなる。まごころと嘘をつかないことを旨として、自分より劣った者を友達にしてはいけない。もし自分に過ちがあると思ったら、グズグズせずにすぐに改めなさい」

数ある論語の言葉の中でも、特に好きなところです。2500年も昔の人が言ったとは思えません。記憶されている方も多いことでしょう。解釈やその実践についてはイヤというほど書かれていますので、ここでは、どうしてこの章が人々の記憶に残りやすいのかを考えてみることにします。

①、孔子の言わんとするところが、時代を越えて共感を得る普遍的なことだから。

もっとも重要な点です。「過ちを認めてすぐに改善する」などは、家庭であれ職場であれ、理屈ではわかっていても、そう簡単にできることではありません。あたりまえのことをズバッと言ってのけるところに、論語の真骨頂があり、この章などは典型的な例です。夫婦喧嘩をしても、この章を覚えているかどうかで大違いです。『ごめん、悪かった』 の一言がすぐに出るようになります。いったい孔子は、幾組の夫婦の離婚の危機を救ってきたことでしょう(笑)

②、「公冶長論語に須磨源氏」と言われるように、途中で挫折することの多い論語読みでも、学而篇の8番目という、論語に興味を持った人の目に触れやすい場所に位置しているから。

これも重要なポイントです。そもそも論語の章建てを説明するとき、「学而、為政、八佾、里仁、公冶長」まではすらすらと言えます。じっくり思い出して、「雍也、述而…泰伯」くらいです。この章は冒頭「学而篇」の、それも八番目にあります。全編読破するつもりで始めた論語読み。いきなり挫折する人も少ないでしょう(笑) また「八」というのがいいじゃないですか。日本人なら末広がり。めでたいポジションにどっしりと腰を据えています。ちょうど覚えやすいところです。

③、『くんしおもからざればすなわちいあらず。まなんではすなわちこならず。ちゅうしんをしゅとし、おのれにしかざるものをともとすることなかれ。あやまてばすなわちあらたむるにはばかることなかれ』 という、対句表現の語呂のよさ。

当ブログの詩歌・古典鑑賞は、もっぱら言葉の響き・日本語の美しさをメインにしております。いくらいいことを言っていても、読者に伝わらなければ意味がありません。流れるような文章は、それだけで記憶に残ります。二回の「すなわち…らず」 と 「…ことなかれ」の繰り返しと、この章は訓読の言い回しにすぐれています。古来よりの素読の重要性がわかります。

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それにしても、いいこと言いますねぇ。さすが論語、あっぱれ孔子! です。

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