送元二使安西(王維)
盛唐の詩人王維の作品を鑑賞します。
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「送元二使安西」(げんじのあんせいにつかいするをおくる)
渭城朝雨浥軽塵(いじょうのちょううけいじんをうるおし)
客舎青青柳色新(かくしゃせいせいりゅうしょくあらたなり)
勧君更尽一杯酒(きみにすすむさらにつくせよいっぱいのさけを)
西出陽関無故人(にしのかたようかんをいずればこじんなからん)
(意訳)「元家の二男が安西に派遣されるのを送る」
渭城の朝の雨が軽い砂ぼこりをうるおしている。宿の前の柳も青々と色を取り戻した。ここでもう一杯君に酒を勧めよう。この先、西のかなたの陽関を出れば、もう友人はいなくなるのだから。
※安西=西域の地名、新彊省庫車(クチャ)
※渭城=咸陽(かんよう)、渭水のほとりの町。
※陽関=敦煌の近くにあった、西域への関所。
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超有名な詩です。漢詩を紹介したほとんどの本に掲載されています。先日訪れた植物園の柳がまさに「柳色新たなり」で、この詩を思い出しました。
(府立植物園にて)
私自身は読みにこだわりがあります。元さんの二男は「げんに」ではなく「げんじ」、勧君更尽一杯酒は「さらにつくせよ、いっぱいのさけを」と、七音で読むのが好きです。作品のすばらしさに加えて、日本語の美しさがあらわれるように思います。
それにしてもいい詩です。送別の詩としては最高の作品です。漢詩と聞くと、「どうも難しくって苦手」という方が多いですが、そんなことはありません。ちょっと漢字が読みにくいだけです。言ってることは単純で、余情にあふれています。すばらしい作品ともなれば、読み下したときの言葉の響きに、和歌や俳句よりも、言葉の美しさ・音楽を感じます。この作品などはその筆頭にあげられます。ぜひ、声に出して鑑賞したいものです。
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「元二の安西に使いするを送る」(王維)
渭城の朝雨軽塵を浥し
客舎青青柳色新たなり
君に勧む更に尽くせよ一杯の酒を
西のかた陽関を出づれば故人無からん
【627】
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