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2013年5月15日 (水曜日)

送元二使安西(王維)

盛唐の詩人王維の作品を鑑賞します。

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「送元二使安西」(げんじのあんせいにつかいするをおくる)

渭城朝雨浥軽塵(いじょうのちょううけいじんをうるおし)

客舎青青柳色新(かくしゃせいせいりゅうしょくあらたなり)

勧君更尽一杯酒(きみにすすむさらにつくせよいっぱいのさけを)

西出陽関無故人(にしのかたようかんをいずればこじんなからん)

(意訳)「元家の二男が安西に派遣されるのを送る」

渭城の朝の雨が軽い砂ぼこりをうるおしている。宿の前の柳も青々と色を取り戻した。ここでもう一杯君に酒を勧めよう。この先、西のかなたの陽関を出れば、もう友人はいなくなるのだから。

※安西=西域の地名、新彊省庫車(クチャ)

※渭城=咸陽(かんよう)、渭水のほとりの町。

※陽関=敦煌の近くにあった、西域への関所。

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超有名な詩です。漢詩を紹介したほとんどの本に掲載されています。先日訪れた植物園の柳がまさに「柳色新たなり」で、この詩を思い出しました。

6271(府立植物園にて)

私自身は読みにこだわりがあります。元さんの二男は「げんに」ではなく「げんじ」、勧君更尽一杯酒は「さらにつくせ、いっぱいのさけ」と、七音で読むのが好きです。作品のすばらしさに加えて、日本語の美しさがあらわれるように思います。

それにしてもいい詩です。送別の詩としては最高の作品です。漢詩と聞くと、「どうも難しくって苦手」という方が多いですが、そんなことはありません。ちょっと漢字が読みにくいだけです。言ってることは単純で、余情にあふれています。すばらしい作品ともなれば、読み下したときの言葉の響きに、和歌や俳句よりも、言葉の美しさ・音楽を感じます。この作品などはその筆頭にあげられます。ぜひ、声に出して鑑賞したいものです。

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「元二の安西に使いするを送る」(王維)

渭城の朝雨軽塵を浥し

客舎青青柳色新たなり

君に勧む更に尽くせよ一杯の酒を

西のかた陽関を出づれば故人無からん

【627】

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