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2013年5月27日 (月曜日)

初夏即事(王安石)

王安石の詩「初夏即事」を鑑賞します。

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「初夏即事」(しょかそくじ)

石梁茅屋有彎碕(せきりょうぼうおくわんきあり)

流水濺濺度両陂(りゅうすいせんせんりょうひをわたる)

晴日暖風生麦気(せいじつだんぷうばくきしょうじ)

緑陰幽草勝花時(りょくいんゆうそうかじにまされり)

意訳:石の橋、茅ぶきの家、曲がりくねった川岸。水は土手の間をさらさらと流れてゆく。晴れた日、暖かい風、ただよう麦の香。新緑の木陰、茂る草…、すべて(初夏の風景は春の)花の時よりも美しい。

※彎碕=曲がった岸。

※濺濺=さらさらと流れるさま。

※陂=堤、土手。

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 一見、名詞の羅列のような詩は、読み下したときの言葉の流れがすばらしいです。起句「石梁」「茅屋」「彎碕」、承句「流水」「濺濺」「両陂」と、まず遠景から列挙していきます。転句で「晴日」「暖風」「麦気」と肌で感じたり鼻で感じたりするものを挙げています。そして結句では「緑陰」「幽草」と、作者の身の回りの風景、つまり近景を挙げた後に、「勝花時」ですべてをくくっています。いいですねぇ。まさに初夏のイメージです。わずか二十八字に、これだけの展開力表現力があるのですから、たいしたものです。詩人の視線と感動が、鑑賞する者に伝わってきます。この詩を「即事(即興)」で作ったというのがまた憎いじゃないですか!(笑)

 王安石(1021-1086)といえば北宋の政治家で、新法の推進者です。私自身は旧法の蘇軾が好きで、これまで王安石の詩はあまり鑑賞したことがありませんでした。今回、いささか考えをあらためた次第です。もっとも、十五歳以上年下の蘇軾は王安石を尊敬しており、互いに交流も深かったと聞いています。政治と詩(文学)とは別物でした。

6391_2(賀茂大橋にて)

 写真は初夏の鴨川の風景です。この詩は中国だけでなく日本の初夏にもあてはまります。

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