おもふさま立つあとたたく額の蚊(若えびす)
元禄十五年刊「若えびす」にある句です。
【おもふさま立つあとたたく額の蚊】(おもうさまたつあとたたくひたいのか)
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意訳:(というか、勝手に解釈)
夏の日の夕方、立ち話をしていた相手の額に蚊が止まっているのを見つけました。
「ちょっと待って! おでこに蚊ぁが止まってるわ。そのまま、じっとしててや。そのままやで…」
そっと手を上げタイミングを計り、まさに叩こうとしたその瞬間、蚊は音もなく飛び立ちました。
“バッシーン!”
「アイタター、死んだか」
「いや、逃げた」
「何それー」
「一瞬の差やった」
「めっちゃ痛かったっちゅうねん!」
「ごめんごめん、思いっきり叩いてしもたな」
「そこまで力入れて叩かんでもええやろ」
「悪い悪い、大きな蚊ぁが止まってたんや」
「ホンマかいな、実はオレに恨みがあるんと違うか」
「何言うてんねん、人が親切心で蚊ぁ殺したろと思たのに、なんやその言い草は!」
「ほんなら、同じように叩いたろかー」
ーーーーー
…なんて、このまま喧嘩になりそうな一句です(笑)
さて、6月も下旬となり、そろそろ蚊の季節を迎えました。我が家では玄関先にたむろしていることが多く、帰宅時に油断するとたちまち刺されます。先日、さっそく一匹退治しました。
ちなみに、京都では「蚊」は、「か」ではなく「蚊ぁ」と微妙に伸ばして発音します。無益な殺生はできるだけ避けたいのですが、蚊とゴキブリだけはどうも許せません。
【665】
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