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2013年6月21日 (金曜日)

限りなく思ひ入り日のともにのみ西の山べをながめやる哉(小野道風)

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 先日東寺を訪ねた際、「小野道風ゆかりの柳」というのをを見つけました。そういえば小野道風の歌は聞いたことがありません。いったいどんな歌を詠むのでしょうか? 調べたところ、後撰集恋の部にいくつか採られていました。一首鑑賞してみます。

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「太秦わたりに大輔が侍りけるに、つかはしける」

限りなく思ひ入り日のともにのみ西の山べをながめやる哉

(かぎりなくおもいいりひのともにのみにしのやまべをながめやるかな)

意訳:(太秦のあたりにいる大輔に贈った歌) 限りなくあなたのことを、思い“入る”とともに、西の山辺に“入る”夕日を眺めていたのですよ。

 大輔というのは道風の恋人でしょうけど、おそらく片思いだったと思います。というのは、この歌の少し後に、道風が大輔に逢いに行ったときすでに別の男が来ていて、「早く帰ってちょうだい」と言われて泣き泣き帰ったという歌があります。この女性は、さらに別の男からも歌を贈られていますから、かなりやり手だったのでしょう。道風への返歌でも、軽くあしらっています。それに道風のほうも、遊び心で逢瀬を重ねていたようです。表題の歌で、まず気がつくのが「思い入る」と「入り日」の掛け言葉です。なんとつまらない言い回しでしょう。受け取ったほうはプッと吹き出してしまわざるをえません。普通真剣な恋心があれば、こんなつまらないダジャレは詠み込まないですよねぇ。掛け言葉は当時の流行にせよ、このレベルは笑ってしまいます。たとえ百年の恋であっても、こんな歌を贈られたのでは一気に覚めてしまいます。この際他の作品も読んでみましたが、道風の作風は掛け言葉ばかりが印象に残って、お世辞にも上手な歌人とはいえないようです。

 小野道風(おののみちかぜ・とうふう、894-967)は、藤原佐理、藤原行成と並んで三蹟と呼ばれます。真蹟は国宝にもなっていて、和様の書道の名手として日本史暗記項目の筆頭と言ってもいいのではないでしょうか。ある意味、超有名人です。とはいえ、歌の腕前はイマイチだということがわかりました。

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 というわけで、東寺にあるゆかりの柳の前で、雨も降っていないのに傘を広げるうちのお年寄り。もちろん、花札の小野道風をイメージしています。ただしカエルはカットしました(笑)

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