大門の重き扉や春の暮(蕪村) 裏門のひとりでにあく日永かな(一茶)
暮春の「門」を詠んだ蕪村と一茶の句を、並べて鑑賞してみます。
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●【大門の重き扉や春の暮】(おおもんのおもきとびらやはるのくれ)
蕪村の句です。どこかの御屋敷か神社仏閣の大門でしょうか。日中多くの出入りがあった門扉が閉じられようとしています。空模様は曇天でしょうか。“ギイーッ”という音が、春の夕暮と相まって心に響きます。
●【裏門のひとりでにあく日永かな】(うらもんのひとりでにあくひながかな)
一茶の句です。蕪村とは違ってこちらの門は軽く、「柴の戸」って感じです。明るい日差しを浴びた裏門に、強い目の風が一瞬サッと吹きました。のどかな午後。そんな誰もが頭に思い浮かべることのできる光景を、さらっと表現しています。
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「重き扉」と「春の暮」の取り合わせで、重苦しくかつ物憂い雰囲気を表現した蕪村と、「裏門」と「日永」で、春の景色をさらっと言ってのける一茶。たまたま見つけた二句ですが、どちらも季語の使い方がうまいなぁと思います。両者の作風の違い、性格の違いもわかるようです。
【646】
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