はな紙を扇につかふ女かな(信徳)
それは、ついこのあいだのことでした。空梅雨でやたらに暑い夜、うちのお年寄りがお風呂上がりに 「暑い、暑い」 と言いながら、ポケットティッシュで顔のあたりを扇いでいます。
『ちょっと待ってその姿! そのままにしといてや。おもしろい句があるねん。ブログに書くから。カメラカメラ!』
…というわけで今回紹介するのは、江戸時代前期の京都の俳人伊藤信徳(いとうしんとく、1634-1698)の句です。
【はな紙を扇につかふ女かな】(はなかみをおうぎにつかうおんなかな)
意訳:鼻紙を扇代わりに使う女に、滑稽さを見出した。
ーーーーー
いかかでしょう。鼻紙とティッシュの違いはあれど、同じような情景ではないでしょうか。扇が夏の季語で、いかにもありそうな場面です。これがべっぴんさんなら、色気を感じて “ゾクッ” とするところです。写真ではそこまで鑑賞できないのが残念です(笑)
【655】
« 紫陽花や仰山過ぎて折らずなる(成田蒼虬) | トップページ | うちわたすおちかた人にこと問へど答へぬからにしるき花かな(小弁) »
「 勝手に鑑賞「古今の詩歌」」カテゴリの記事
- 夏風邪はなかなか老に重かりき(虚子)(2014.05.21)
- 後夜聞仏法僧鳥(空海)(2014.05.20)
- 夏といへばまづ心にやかけつはた(毛吹草)(2014.05.19)
- 絵師も此匂ひはいかでかきつばた(良徳)(2014.05.18)
- 神山やおほたの沢の杜若ふかきたのみは色にみゆらむ(藤原俊成)(2014.05.17)
「へたな話」カテゴリの記事
- 散残るつゝじの蕊や二三本(子珊)(2014.05.08)
- 春はただわが宿にのみ梅咲かばかれにし人も見にと来なまし(和泉式部)(2014.02.28)
- 笹の葉におく霜よりもひとり寝る我が衣手ぞさえまさりける(紀友則)(2014.02.09)
- 年よればなほ物陰や冬ざしき(智月)(2014.02.01)
- 蟹(藤井竹外)(2014.01.29)
« 紫陽花や仰山過ぎて折らずなる(成田蒼虬) | トップページ | うちわたすおちかた人にこと問へど答へぬからにしるき花かな(小弁) »
コメント