物臭き合羽やけふの更衣(桃隣)
江戸時代の前期の俳人桃隣の句、
【物臭き合羽やけふの更衣】(ものぐさきかっぱやきょうのころもがえ)
を鑑賞します。
(意訳)雨の衣更え。衣更えの日に雨合羽とは、なんと面倒なことだろう。それに、久しぶりに出したこの合羽、いささか臭うし~。
天野桃隣(あまのとうりん、1649-1719)は、芭蕉の親族(甥?)とも、徒弟ともいわれる俳人です。「卯月朔日 雨」との前書きがあります。「物臭き」を、面倒くさい・億劫という意味と、単純に、臭う、の掛け言葉として意訳しました。実際は、芭蕉の三回忌に師を慕って奥の細道を行脚した際に詠んだものです。道中吟ですから、こんなに気楽な心境ではなかったと思います。あくまでも勝手な鑑賞です。桃隣には人口に膾炙した句はありませんが、この句などはよくできた作品です。芭蕉のそばに侍していたせいか、調べのいい句が多いです。
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というわけで、六月になりました。学校や職場などでは、夏に向かって“ころもがえ”ですね。それとも現代的には“クールビズ”のほうが、季語として適切でしょうか(笑)
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