蓮葉のにごりに染まぬ心もてなにかは露を玉とあざむく(僧正遍照)
先日訪ねた府立植物園の池に、ハスが生い茂っていました。古今集から僧正遍照の歌を鑑賞してみます。
【蓮葉のにごりに染まぬ心もてなにかは露を玉とあざむく】(巻三夏歌165)
(はちすばのにごりにしまぬこころもてなにかはつゆをたまとあざむく)
(意訳)ハスの葉は、濁った水の中に生えていながらきれいな心を持っている。なのに、葉に置く露を玉に見せかけて人の目を欺くのはどうしてだろうか。
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ハスといえば仏教の象徴です。調べてみればインドが原産とのこと。なるほど、仏教との関連がうなづけるところです。泥水の中に生えていながら大きな葉を広げ、美しい花を咲かせるところから、仏性のあらわれとされているのだそうです。遍照の歌、上の句はまさにそのことを言っています。下の句はいったいどういう意味でしょう。“そんな清浄なハスの葉であっても、たまる水を玉のように見せかけて人の目を欺くのはなぜか?” 直訳すればそういう意味です。卑近に解釈すれば、仏の無慈悲を憤っているようにもとれます。それとも仏の慈悲にも限界があることを言いたいのでしょうか。
これはおそらく、露を現世(露の世)に、玉を利益にたとえているのですね。現世の利益にとらわれることなく、仏の慈悲にすがって極楽往生を願うべきことを説いているのだと思います。
(とはいえ、勝手な鑑賞であることをお断りしておきます)
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