こもり居て雨うたがふや蝸牛(蕪村)、雨一見のかたつぶりにて候よ(一茶)
とある雨の日、京都市内を歩いていると、石垣にカタツムリを見つけました。
「いやぁ、これは珍しい、写真写真!」
思わず口をついて出ます。カタツムリを目撃するのは久しぶりです。
今回は、カタツムリを詠んだ蕪村と一茶の句を鑑賞してみます。
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【こもり居て雨うたがふや蝸牛】(こもりいてあめうたがうやかたつむり)(蕪村)
意訳:はは~ん、殻に籠って雨が降っているかどうか疑っているのだな、カタツムリは。
【雨一見のかたつぶりにて候よ】(あめいっけんのかたつぶりにてそうろうよ)(一茶)
意訳:いよいよ雨が降ってきたな。そろそろ殻に籠るのをやめて、雨の風情を一見してみるか。そうよ、オレ様はカタツムリってことよ。
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蕪村の句はカタツムリを観察する立場から、一茶の句はカタツムリに成り替わって、という違いはありますが、いずれも雨が降ると同時にカタツムリが現れることを題材にしています。かつては京都市内でも、アジサイとともに雨に打たれるカタツムリがどこにでも見られました。ごく当たり前の光景でした。
それが「久しぶりやなぁ」の言葉とともに、わざわざ記念撮影までするような貴重な存在になったのは、いつからでしょうか。日本人ならだれでも知っているはずの、雨の日の登下校時にカタツムリを見つけて必ず歌っていたはずの、『♪でんでんむしむしかたつむり~』の唱歌も、今は昔のこととなったのでしょうか。
『たかがカタツムリ、されどカタツムリ』
蕪村や一茶の句のように、カタツムリ自身の意志で殻に籠って出てこないのならまだしも、環境破壊が進んでいるのだとすれば悲しいことです。
【669】
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